「いまのところはタマゴの殻ひとつ見つかっていない」そうだが、地層条件からは恐竜の化石が見つかるに違いないと期待を持つ。インタビュー内容を読む限り、彼はタマゴが発見される可能性があると考えているようだ。
李作明によると、香港で白亜紀の地層が広がっているのは、新界東北部の西貢半島付近にある赤洲、大鵬灣に浮かぶ石牛洲や吉澳洲、深圳とのイミグレーションに近い沙頭角付近の鴨洲や細鴨洲などだ。「洲」とは島のことであり、上記の地名はいずれもほとんど人が住んでいない、香港の最果ての小島ばかりである。
香港と地理的に近い広東省広州市では、類似のレッドベッド地層から十数点の恐竜化石や恐竜のタマゴ化石が見つかっている。なにより、前回記事で紹介したように広東省深圳市の坪山区でも、近年になりタマゴの化石が出土した。坪山区は、香港側の「恐竜化石発見候補地」である島々とは十数キロしか離れておらず、行政区画が異なるだけでほぼ同一の地域だ。
さらに朗報もある。2015年にやはり新界の西貢半島にある荔枝荘で、1億4700万年前のジュラ紀後期の淡水魚Paralycopteraの化石が、香港大学地球科学学部の学生によって発見されているのだ。こちらは香港の領域内ではじめて見つかった中生代の脊椎動物の化石だという。
魚類が見つかるならば、恐竜の化石まではあと一歩だろう。
最近、香港の都市部はデモ運動がらみでキナ臭いニュースが多いが、新界には浮世の憂さを忘れさせるような広大な自然が広がっている。
恐竜化石「不毛の地」における初の化石発見のニュースが、香港の社会に小さな朗報をもたらすことを期待したい。