香港の新界地域(筆者撮影)

香港にあった「自然豊かな最果ての小島」で恐竜化石に肉薄す!

話題の「大陸の周縁」は恐竜不毛の地?
大宅賞作家・安田峰俊氏は中国の「周縁」たる香港で緊迫する現地情勢を取材中。それでもブルーバックスの好評連載「恐竜大陸をゆく」はガッツリ更新いたします。実は見逃せない恐竜発掘の「周縁」事情をお楽しみください。

ここ数ヵ月、デモで荒れる香港の情勢は風雲急を告げている──。

Admiralty香港の金鐘(アドミラルティ)の様子。2019年10月4日撮影 Photo by Getty Images

と、そうした政治的な話はともかくとして、中国で騒乱が起きるのはたいてい周縁の地域である。非常に大きな国であるため、「中国」という枠組みに包摂され切っていない周縁地の場所にはトラブルが多いのだ。

すなわち、内陸部では新疆・内モンゴル・チベット、沿海部では香港やマカオ・台湾などがこうした周縁地域に相当する。

前者の3地域は中華人民共和国の「自治区」だが、実質的には他の省と同じく北京の中央政府の直轄支配下。対して香港とマカオは、中国国内と別個の法体系が存在するなど、高度な自治が認められた特別行政区だ。さらに台湾は「中華民国」という別の国名を名乗っており、自分たちが中国人ではないと考えている人もかなり多い。

いっぽう、恐竜の視点から見たこうした中国の周縁地域は、内陸部と沿海部でかなり様子が違っている。

 

恐竜化石の「不毛の地」

新疆と内モンゴルは、広大な砂漠や草原から多数の中生代の化石が出土することで知られており、過去の本連載でも新疆のズンガリプテルス(翼竜)やティアンチサウルス、内モンゴルのヌーロサウルスなど、さまざまな恐竜を紹介してきた。いずれも中国全体から見れば開発が相対的に遅れた地域ながら、恐竜の発掘にかけては最先端の場所と言っていい。

またチベットでも、東部のチャムド市付近のダマラ(なんと標高が4200メートルだ)で1970年代から恐竜化石が数多く見つかっている。日本ではあまり知られていないが、こちらはかなり興味深い話題なので、また別の原稿で詳しく紹介することにしよう。

対して、恐竜化石の「不毛の地」なのが沿海部の香港・マカオ・台湾の3地域である。マカオの場合は面積が東京都板橋区と同程度しかない狭い地域であり、しかも埋立地が多くを占めているので、化石が見つからないのは仕方ない部分もある。

マカオマカオの全景 Photo by Getty Images
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だが、台湾は九州とほぼ同じ広さ、香港も東京都の半分くらいの広さはある。

台湾も香港も、日本人の観光客がもっとも頻繁に訪れる地域だ。恐竜については「不毛の地」であることは百も承知のうえで、本稿ではあえて台湾・香港の化石事情を紹介していこう。

台湾にもあった「恐竜大陸」

まず、台湾からみていきたい。

台湾はかなり大きな島だが、地層は新生代第四紀のものが大部分──。すなわち、私たちが生きている現代とかなり近い地質年代の地層が広がっており、恐竜化石の出土は期待できないとされている。