たった1回転んだだけで「死亡」…高齢者転倒のヤバすぎる実態

転んで3ヵ月であの世に…
週刊現代 プロフィール

3 転ぶ人には、こんな前兆がある

60代以上の人は、なんの前触れもなく転ぶのではない。転倒事故が起きる直前には、異変を知らせるサインが出ている。その前兆の最たるものが、極端な「すり足」だ。

すり足は、ズズッ、ズズッと足の裏全体を地面に擦り付けるような歩き方。これは大腰筋と呼ばれる、上半身と下半身を結ぶ股関節回りの筋肉が弱まることで起きてしまう。

筋力の低下でつま先をきちんと上にあげられず、引きずるように歩いてしまうのが特徴だ。すり足になることで手の振り幅も小さくなり、体全体の動きが緩慢になってしまう。

「すり足の状態になると、1㎝にも満たないようなわずかな段差でもまたぐことができず、簡単に転んでしまう。

すり足が原因で転倒して大腿骨頸部を骨折、身動きが取れなくなり救急車で運ばれてくる方は本当に多いです」(要町病院副院長の吉澤明孝氏)

前進しようとするときに足を大きく外側に振りながら歩く「ぶん回し歩行」も、危険な前兆のひとつ。この歩き方をすることで障害物に足がぶつかりやすくなり、必然的に転倒も増える。

ぶん回し歩行をする人は脳血管に障害を抱えている可能性も非常に高く、体が言うことを聞かないため、深刻な転倒事故を起こしてしまう。

都内のデイサービスに勤める理学療法士が言う。

「すり足やぶん回し歩行の他にも、『ながら動作』ができなくなっている60代以上の人は要注意です。これはたとえば、誰かと一緒に並んで歩く際、同時に会話を交わすことができない状態。歩くか話すか、どちらかしか体が対処できないのです。

この夏のことでした。ウチの施設に通っていた87歳の男性が転倒して、腕の骨を折る事故が起きました。

その方も顔馴染みのデイサービス利用者と会話しながら施設内を散歩しようとしたとき、体が思うように動かずに階段で足をひっかけてしまったんです」

 

このような前兆が出ていなくても、普段の暮らしの中で、とにかくよくつまずいてしまう。そんな人は、薬の多剤服用が悪影響を及ぼしているのかもしれない。

薬を服用することで起きるめまいやふらつき、起立性低血圧も転倒のきっかけになる。

実際、日本老年医学会が発表した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」でも、1日5種類以上の薬を服用している人は、なにも飲まない人に比べて140%も転倒リスクが高いことが報告されている。

なかでも抗うつ薬や高血圧治療薬を服用している人は副作用によって、たった1錠でも転んでしまうことがある。

「そんな薬のなかでも一番転倒するリスクが上がるのが睡眠薬です。特にベンゾジアゼピン系睡眠薬と呼ばれる薬は筋弛緩作用があるので、転倒事故に直結しやすい。なるべく服用を避けたほうがいいでしょう」(鳥取大学医学部教授・萩野浩氏)

なにも理由や兆しがなく転ぶ人などいない。転倒の前には、必ずそれを知らせるシグナルが出ている。