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香港の警官はなぜ18歳の高校生を撃ったのか「発砲事件」の真相

底が抜け始めた香港社会
ふるまい よしこ プロフィール

だが、警務処長といい、この記者会見といい、件の警官の調査と現場の検証すらせず、また警官隊のメンタルについても合理的な説明を行わず、「合法的、合理的」を呪文のように繰り返すのみ。その姿に市民は納得できていない。

だからこそ、市民の間で、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が進める警察クレーム処理委員会を拡大化した調査だけではやはり足りず、「独立した立場からの調査委員会設立は譲れない」という思いが高まるばかりとなっている。

 

行政長官の「衝撃発言」

その林鄭行政長官だが、9月4日にやっとのことで、今回のデモの直接の原因となった「逃亡犯条例」改定案の撤回を宣言し、その際に市民に向けて約束した「コミュニティ対話」が同月26日に開催された。

9月26日に行われた「コミュニティ対話」。中央が林鄭行政長官〔PHOTO〕Gettyimages

しかしそれは、市民を満足させるとは言い難い、政府の「お手盛り」感が満載の対話だった。そればかりかその場では、あまりに衝撃的な発言が、行政長官の口から飛び出した。

まず2万人あまりの応募者から選ばれたのはわずか150人。そして厳重な警戒の中で、会場に入場した市民は荷物を隅々まで調べられ、ガスマスクやゴーグルなどの所持品は入り口で一時預かりとされる、というものものしさだったという。

そこに集まったのは、明らかにデモ隊に参加していると思われる黒尽くめの姿でマスクをした人たちもいれば、仕事帰りらしいスーツやオフィスウェアに身を包んだ、見るからに「和理非」(平和的、理性的、非暴力な抗議を主張する人たち)もいた。そこから、司会者がくじ引きのようにして番号札を引く形で発言者30人が選ばれた。

壇上に並んだ林鄭行政長官と4人の閣僚たちに向けられた意見は、ほぼ批判的なものばかりだった。明らかにデモ参加者とわかる人たちはともかく、「和理非」を自称する人たちも、「なぜ200万人が声を上げたときにその声を聞こうとしなかったのか。香港はもう引き返せなくなった」と異口同音に繰り返した。そしてその責任を問い、多くの人が「なぜ独立した調査委員会を設置できないのか」と問い詰めた。

一部の参加者からは「学生に政治は必要ない」といった意見や「警察は怖くないけれど、黒いTシャツ姿が怖い」といった声も出たが、前者は元教育局関係者で、後者もまた元准警官であることがメディアによって暴かれている。さらに市民席に座った参加者の中には、警察がしばしば使う独特のイヤホンをした人たちが紛れ込んでいたこともメディアによって検証済みだ。それらの発言がたとえ個人のものであったとしても、中立な立場からの発言とは言えないだろう。市民は暴露された事実に「さもありなん」という反応を見せた。

だが、ここで林鄭長官は非常に興味深い、驚くべき発言をしている。