# 中国 # 香港

香港の警官はなぜ18歳の高校生を撃ったのか「発砲事件」の真相

底が抜け始めた香港社会
ふるまい よしこ プロフィール

さらにこの記者会見で警務処長は、10月1日だけで香港各地で威嚇射撃を含めて合計6発の実弾が発射されたこと、そしてそれらはすべて「合法的で合理的だった」と強調した。しかし、これもまた香港の現地紙「りんご日報」がそのサイトに上げた現場動画を見ると、逮捕されかけているデモ参加者に近づいた記者を遠ざけるために、少なくとも2発の発砲が行われたことが確認できる。記者は「わたしは報道陣だ、報道者に発砲するのか」と激しく詰め寄っている。

これも「合法的、合理的」といえるのか。

 

警官隊に起きていた「変化」

実のところ、こうなるのでは…という予感はすでにあった。

週末の9月28日はちょうど5年前に雨傘運動が始まった日であり、29日の日曜日にもあちこちで激しいデモが起きている。その時から複数の警官が拳銃を握って水平に構える姿が、メディアや現地にいた市民のカメラに捉えられていた。

一挙に複数の、それもそれぞれバラバラの場所で警官たちが腰から拳銃を抜いて構えるその姿に、何かが変わったようだ、という印象があった。

前掲のニューヨークタイムズの検証動画でも指摘されているが、荃湾で18歳の青年の胸を撃ち抜いた警官は、同時にゴム弾かビーンバック弾用のライフルとペッパースプレーを所持しているのが動画で確認できる。なのに、腰につけていたホルスターからわざわざ拳銃を抜き、それを相手の胸めがけて発射したのである。

18歳の高校生を撃った後の警官隊〔PHOTO〕前出の動画より引用

その選択はいかにして行われたのか、という点も非常に興味深い点だ。少なくともここ数日、警官隊ははっきりと腰につけている拳銃を意識するようになっていたのは間違いなかった。

「警察のガイドラインが変わったんでしょうか?」

2日に開かれた警察報道官らによる記者会見でも、メディアからこういう質問が飛んだ。なぜ、たびたび警官が腰から拳銃を抜いてデモ隊に向けるようになったのか、そしてくだんの警察は重装備にもかかわらずわざわざ腰のホルスターから銃を取り出したのか、そして手や足を狙うのではなく直接心臓部を撃ったのか。

それに対して、警察側のスポークスマンはきちんと答えず、いかなる危機を感じたときに発砲するのか、トリガーに指をかけるのはどんなときか、といった細かい質問に答えただけで、次の質問に移った。

ガイドラインの疑惑に加え、日々続くデモ対応による警察官のメンタルの問題も指摘されている。常に緊張状態に置かれた警察官たちが、実際に取り締まりというよりもリンチとしか思えない行為に及ぶ場面も頻繁に見られ、そうした状況下にある警官に、正式に銃を抜くことを許可したらどうなるのか、という不安は大きい。