警官の発砲に抗議するデモ(10月1日)〔PHOTO〕Gettyimages
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香港の警官はなぜ18歳の高校生を撃ったのか「発砲事件」の真相

底が抜け始めた香港社会

10月1日、とうとう香港で恐れていたことが起きた。警官がデモ隊に向けて実弾を発射、眼の前にいたその男性の胸を撃ち抜いた。男性がそのまま崩れ落ちるのと同時に、デモ隊はササーッと引き、1人が倒れた彼の様子をうかがうように近づいたところ、別の警官がタックルをかけ、その人物もそのまま拘束された。

その後、警官隊が3人、周囲を取り囲む人たちに向かって水平に拳銃を構える姿が、現場を記録していた動画に残っている。その間、メディアによると3分間、被弾して倒れた男性の様子を確認しようとする警官はいなかった。

このニュースはあっという間に広がり、事件が起きた郊外の住宅地、荃湾(センワン)以外の地域にも衝撃をもたらした。さらに人々に大きなショックをもたらしたのは、撃たれたデモ参加者は18歳、まだ高校生だったということだった。

高校生が撃たれた前後の様子〔PHOTO〕後述の動画より引用

警察トップの曖昧な説明

その夜に開かれた記者会見で警務処長(日本の警視総監に相当)は、「警官の行為は合法的で合理的なものだった」と部下をかばった。だが、こうした警官ばかりをかばう文言を、人々はすでに聞き飽きている。

しかし、この日ばかりは「聞き飽きた」で済ませるわけにはいかなかった。事件からまだ数時間しか経っておらず、またこの日各地で同時展開されたゲリラデモも一時のピークは過ぎたものの、街中はまだ混乱が続いていた。そんなタイミングで現場検証すら行わずに警務処長が真っ先に警官側の正当防衛を主張したのだから、市民が納得するわけがなかった。

 

事件は大きなショックを引き起こした。翌2日の香港は普通の出勤日だったが、そのランチタイムを使って抗議が行われ、デモ隊は政府庁舎まで練り歩いた。また、仕事や学校が終わった時間帯から各地で抗議の集会が開かれた。

警務処長は警官が深刻な生命の危機を感じたために発砲したといいながら、(デモ隊に包囲されて攻撃されていた)警官仲間を助けるためだったとも言った。一般には警官は自分自身の生命が危機にさらされたときの正当防衛は許されているものの、「仲間を助けるために発砲する」ことは正当防衛とは認められていないはずだ。この日の警務処長はこの原則をうまくかわして、状況をかなり都合の良いようにデフォルメして解説した。

だが、実際にネットでアップされている、複数の角度からの動画の内容は、警務処長の説明をそのまま聞くのとは大きく違う。米紙「ニューヨーク・タイムズ」もそれらの動画を使い、件の警官が至近距離から被害者を撃つ必要があったかどうかを検証している。