広告の未来、それは「脳」の争奪戦かもしれない

ほんとうの「哲学」の話をしよう
岡本 裕一朗, 深谷 信介 プロフィール

深谷  純粋情報というのは具体的にはどういうものですか。

岡本  純粋というのは、雑多なものがまじっていないとか、偶然的なものを含まず必然性につらぬかれているとか、そういった意味です。

つまり、いまはまだ広告は目に見えるかたちをとっていて、そこにはさまざまな要素が付加されていますが、今後脳に情報を直接送るシステムができれば、広告は視覚的に見えるものである必要はなくなります。

そうなると広告は、人を動かすために、いや人と機械の融合体ですから人というより対象と言ったほうがいいかもしれませんが、その対象をいかに動かすか、そのためにいかに有効な信号を脳に送るか、という営みになります。その有効な信号をつくることが広告の仕事になっていくだろうということです。

深谷  さまざまな付加要素が削ぎ落とされて、広告は純粋情報に戻っていくとも言えそうですね。

 

岡本  最近、さまざまな事象が物質的なものに向かっていると思いませんか? 哲学でも、ポスト言語論的転回と言うときに、記号論や意味論に向かうのではなく、物質的なもの、すなわち「実在」を問題にするのが基本的な方向になってきています。

メディアを考えるにも、メディアの機能や意味よりも、メディアの技術など物質的な側面が重視されています。技術的な側面から脳と現実との関わりはどうなっているのかといった探求も盛んにおこなわれているわけですが、そもそも脳というのは物質ですから、物質へのアプローチなくしてその解明はできません。

21世紀に入って、この物質的なものへと向かう傾向が鮮明になってきています。その意味では広告も、イメージや感性や情緒に訴えるのではなく、脳に直接情報を送るといったような物質的なやりとりになっていくはずです。

別の見方をすれば、脳さえ変化させればいい、という話になっていく。そうなると、軍需産業と医療産業は何の変わりもないものになっていきます。

先ほど、メディアもマーケティングも軍需産業を追いかけてきたとおっしゃいましたが、それらはすでに医学や医療の世界と手を結ぼうとしているのではないでしょうか。その兆しはいろいろなところに見えてきています。