広告の未来、それは「脳」の争奪戦かもしれない

ほんとうの「哲学」の話をしよう
岡本 裕一朗, 深谷 信介 プロフィール

広告のゆくえ

深谷  いっぽうで、メディアの進化もマーケティングの進化も、これまで軍需産業を追いかけてきたという一面があります。インターネットもしかりです。軍需産業において、インターネットの次にいま何が考案され構築されようとしているのか、そこにメディアやマーケティングの未来が垣間見られるということもありますね。

岡本  その点で言うと、一つの方向としては、人間の体のなかに機械を埋め込むという人間のサイボーグ化がこれから進んでいくのではないでしょうか。スマホが登場した瞬間から、そちらの方向に向かうことは明らかに見えていますね。SF小説でも映画でもアニメでも、そういう世界はすでにさまざまなかたちで描かれています。

人間のサイボーグ化というのは、人間として生まれた者が機械と融合していくということですが、そのときに問題なのは、たとえば脳のなかにチップを埋め込んで、脳が常時ネットワークに接続された場合、個人の意識や「わたし」という主体や主観はいったいどうなっていくかということです。また、四六時中さまざまな情報が絶えず脳に入ってくるという状態は、心地よいものでも安全でもないように思いますよね。

人間のアナログ脳は適当に忘れることができるけれども、システムにはデータを適当に捨てるといった機能はありませんから。おびただしい量の情報が常時入ってきたら、生身の人間は困ってしまいます。

〔PHOTO〕iStock
 

深谷  しかしそうなると、もはや人間ではなくなる。人間と機械の結合体ということですね。

岡本  サイボーグ化では、自分の人間としての身体が何%残っているかというようなことが個性になっていくかもしれません。生物と無生物、自然と人工、そういったこれまでは疑う余地もなかった区別もしだいに消えていくのではないでしょうか。

深谷  人間そのものがそのように変化していくと、広告はほぼ意識になる?

岡本  広告は、最終的には「純粋情報」になっていくのだと思います。純粋情報を脳に直接送ることが、広告の営みになっていくのだろうと。

深谷さんは「広告とは?」という問いに、「広告は情報である」と本書で定義されましたよね。そのとおりで、広告は純粋な情報になっていくんじゃないでしょうか。