2019.10.06
# エンタメ

令和歌舞伎は群雄割拠だ! 海老蔵世代がいよいよ跳躍する

團十郎襲名で劇界地図はどう変わる?
中川 右介 プロフィール

初代猿之助は、9代目團十郎に破門され、後に許されるという過去もあり、主流派とはならなかった。7代目幸四郎は、歌舞伎座で不遇だった時期があり、帝国劇場ができると、そちらに移籍したので、ますます不遇になったが、長男が市川宗家の養子になったことで、主流派の一角に復帰できた。

幸四郎家は、市川宗家と親戚でもある。しかし、「幸四郎」は「團十郎・菊五郎」とは並び立てない。

当代の幸四郎は、海老蔵・松緑とは再従兄弟の関係にあり、七代目幸四郎追善興行で同座・共演したこともあるが、通常の公演では同座・共演機会は少ない。今後も大一座の公演以外では、新しい團十郎と幸四郎の共演は少ないだろう。

代々の幸四郎は、7代目は帝劇時代はオペラやシェイクスピア劇も演じ、当代の白鸚もミュージカルスターでもあるように、新しいことに積極的な家である。

代々の猿之助も、新作歌舞伎や古典の新解釈といった変化球で名を成してきた。当代もその路線は継いでいる。

ここ数年、猿之助は白鸚・幸四郎の父子と同座・共演している。

6月の歌舞伎座では、白鸚・幸四郎・染五郎の父子三代と猿之助が中心で、三谷幸喜の新作歌舞伎『月光露針路日本 風雲児たち』を上演、8月の納涼歌舞伎も幸四郎・猿之助が主軸となっている。

幸四郎・猿之助は毎月同座しているわけではないが、この同盟関係が、今後どうなるのか。

猿之助は『ワンピース』での成功を得て、自分よりも若い世代をまとめて、新劇団とも言えるものを結成しつつあり、10月・11月とその一座で『オグリ』を新橋演舞場で上演する。

12月の新橋演舞場は、菊之助・七之助による『風の谷のナウシカ』、一方、12月の国立劇場では幸四郎がチャップリンの映画を原作にした新作歌舞伎『蝙蝠の安さん』を上演する。

こういう競い合いは、新時代到来を期待させる。

 

アクシデントを乗り越えて

7月の歌舞伎座が「海老蔵歌舞伎」の月となったのは2017年だった。

それまでも新橋演舞場や、地方の劇場では、座頭となっていた海老蔵が、初めて歌舞伎座で座頭となったのだ。その前月に妻・小林麻央を失くしたばかりで、長男・堀越勸玄との共演、二人での宙乗りは、観客の涙を誘った。

以後、7月の歌舞伎座の「海老蔵歌舞伎」は2018年、2019年と続いている。古典もあれば、新作もあった。

7月は長く、三代目猿之助(二代目猿翁)が座頭となっていた月だ。

しかし、偶然にも、海老蔵襲名の直前に、猿之助は倒れ、舞台に立てなくなった。

以後は、玉三郎が7月公演の座頭となる年が多く、海老蔵も加わり、泉鏡花ものを上演していた。それまで「7月の歌舞伎座」には成田屋は縁がなかったが、レギュラー枠となった。

その後、玉三郎が引いて、海老蔵と猿之助とが同座した年もあったが、17年からは海老蔵の月になったのだ。

今年は、昼の部で「新歌舞伎十八番」の『高時』を市川右團次に任せ、海老蔵は「新歌舞伎十八番の『素襖落』と「歌舞伎十八番」の『外郎売』に息子の堀越勸玄と出た。来年はこの子が市川新之助を襲名する。

夜の部は古典の『義経千本桜』を原作にした新作『星合世十三團』で、海老蔵は13役を早替わりした。

ところが、喉を痛めて声が出なくなり、休演というアクシデントに見舞われた。

歌舞伎公演は、たとえ主役が急病や怪我で出演不可能となっても、代役を立てて公演は続行する。しかし、今回は新作で、13役早替わりの演出だったので、代役が立てられず、一説には、歌舞伎座始まって以来の「休演」となった。

海老蔵はなにかと、事件を起こすのである。

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