あの巨大企業で起きた「59歳女性アルバイト死亡」の深層

遺族に話を聞いてみると…
横田 増生 プロフィール

アマゾンからの連絡はない

母親の三橋はこう語る。

「コーヒーが大好きでね、あの日も、朝食に食パンとコーヒーを飲んで出かけましたが、こんなことになるなんて、本当にびっくりしました」

内田が亡くなった当日、どのような連絡を受けたのだろう。

「娘が倒れたって、日本郵政スタッフの方から電話があったのが午前10時半ごろでした。容体を訊いたら、はっきりはわからないということだったんで、とりあえず、バスとタクシーを乗り継いで、娘が搬送された小田原市立病院まで行ったんです。

到着したのは12時前でしたね。治療室に行ったら、もうダメだ、って先生に言われました。私が到着するのが間に合わなかったんですね。日本郵政の人からは、娘が職場で倒れたので、応急措置をして、急いで救急車を呼んだ、という説明を受けました」

 

見せてもらった死亡届には、「死亡したとき 平成29年10月10日 午前11時50分」とあり、「発病(発症)又は受傷から死亡までの期間 約3時間」と記載してあった。亡くなる3時間前にくも膜下出血を発症したということなら、9時前後に内田は倒れたことになる。

死亡届を見ながら、私が取材で聞いた話を三橋に伝えた。内田が倒れてから、複数の人間が物流センター内で電話をたらいまわしにして、救急車を呼ぶまでに1時間前後かかっていることなどを。

「そんな話は聞いてないねぇ……」

アマゾンからの連絡は一切なく、日本郵政スタッフの担当者が、9月分と、10月分の給与を持ってくるからという連絡があっただけなのだという。そのほかに受け取ったのは、香典の3万円だけ。

「娘が亡くなってから毎週1回は、お寺に行って、花を供えているんですよ。もうすぐ四十九日が来ます」と言って三橋は薄く微笑んだ。アマゾンを恨むでもなく、娘の死に悲嘆にくれるわけでもなく、その淡々とした口調が印象に残った。