はるか昔、ギリシャの時代の数学者を悩ませ、そして魅了した「三大作図問題」と、「円周率の近似値の算定」の2つのトピックをお届けします。数学のお兄さんと一緒に、奥深い数学の歴史を旅してみましょう。
中学、高校と数学の教科書に、少しだけ数学史が載っていたのを覚えていますか?
多くの教科書では、各単元の扉ページに1ページではあるものの、ニュートンやオイラーなどの数学者の名前が載っており、簡潔に彼らの実績について触れています。
とはいえ、個人的には、わずか1ページの紹介では「数学史」という魅力ある分野のことはとうてい伝えきれないように思います。
私たちは、数学史を知ることで、あらためて数学の魅力を体感することができるのです。今回は、数学史のうち2つの分野だけではありますが、その魅力の一部をご紹介していきます。
【雑学21】古代の「三大作図問題」
まずは、紀元前の「未解決問題」を紹介します。
未解決問題といえば、2000年にクレイ研究所が発表した7つの(現在は1つ解決ずみ)ミレニアム懸賞問題のことを想起される方もいるかもしれませんが、未解決問題への数学者の好奇心はいつの時代でも変わることはありませんでした。
今よりはるか昔の、「ギリシャの三大作図問題」と呼ばれる問題と、それにまつわるエピソードを紹介しましょう。名前のとおり、紀元前6世紀から5世紀ごろの古代ギリシャで多くの数学者が話題にしたといわれている作図の問題で、以下の3つの問いの正否が議論されていました。
・与えられた立方体の体積の二倍の体積を持つ立方体を作図することができるのか
・任意の角を作図により三等分することができるのか
ここでの「作図」においては、コンパスと定規のみ使用することが許されました。当然、分度器や三角定規のような道具は使えません。
19世紀になってようやく、この問題はすべて「不可能」であることが証明され、解決に至りました。
ではいよいよ、この3つの作図問題を順に解説していきましょう。
まずは1つ目の、
について見ていきましょう。
こちらは「円積問題」と別名がついている問題です。以下のような図をイメージすると、理解しやすいと思います。

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この問題は、同じ面積である円と正方形を描けばいいというだけなので、円の半径や正方形の一辺の長さはとくに決める必要はありません。
したがって、ここではわかりやすく「円の半径を1として、同じ面積の正方形が作図可能であるか」を考えてきましょう。