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「狗尾草」「敗荷」の読み方は? 日本人なら知るべき『歳時記』の世界

知れば知るほど、心が豊かになる

欠け始めた月を愛で、打ち枯れていく草木に趣を感じる。古来より、日本人は移ろい、失われていく姿に独自の美を見出してきた。歳時記のページを繰るだけで、あなたの世界は格段に豊かになる。

日本人の美意識に訴える

「『歳時記』とは季節を感じるための標識のようなものだと思います。万葉の時代から、日本は季節と生活が結びついていました。歳時記に載っている季節の言葉を聞くことで、その季節がやってきたと改めて感じていたわけです。

現代は携帯電話で様々な風景を撮影しますが、そういったものがなかった時代は、俳句によって情景を切り取り、心に残していました。歳時記に載っている言葉に親しむことで、昔からずっと変わらない季節の移り変わりを知ることができるでしょう。

同時に、自然の無限性に対する人間の有限性を感じられる。それが俳句、そして歳時記の醍醐味だと思います」

こう語るのは大東文化大学文学部中国文学科准教授・山口謠司氏だ。

いま歳時記が静かなブームを呼んでいる。バラエティ番組『プレバト!!』(TBS系)などで俳句が脚光を浴びているが、その俳句に不可欠なのが「季語」だ。歳時記は季語を季節ごとに分類し、解説や例句と一緒に載せた書物のことである。

 

歳時記の起源は古い。6世紀頃、中国に『荊楚歳時記』という書物があった。これは長江流域の地方の風俗や年中行事をまとめたもので、日本にも奈良時代に伝来した。

年中行事の多くが、この荊楚歳時記をもとに定められ、日本の制度や文化に大きな影響を与えた。

現在のような季語と例句を一緒に掲載したものは江戸初期に北村季吟が著した『山之井』が嚆矢と言われている。江戸後期には滝沢馬琴が編んだ『俳諧歳時記』がベストセラーとなり、歳時記という言葉が広く普及するようになった。

「歳時記は俳句を詠むときの必須アイテムです。こういう俳句が詠みたいというイメージがなくても、歳時記をめくっていると、季語が勝手に自分の記憶のスイッチを押してくれる。

季語も相性があるので、難しいものに敢えて挑戦するのもいいですが、『これなら詠めるかも』というものから選んでいくのもいいと思います。自分の心が動くものを見つけていくうちに、自然と幅広い句が詠めるようになっていくと思います」(俳人の神野紗希氏)

歳時記には千数百年前の人々が感じた四季の移り変わりや風俗が脈々と受け継がれている。俳句の手引書として使うことで、そうした世界を肌で感じることができるのだ。

今回は秋の季語を通して、歳時記の世界、さらにそれらを使った俳句の上達法を見ていこう。