大人になってからも食べにくる卒業生たち

ところが食堂では、大人になってから家族を連れて食事に訪ねる卒業生の姿がたびたび見られる。どこでも食べられそうなのに、どこでも食べられないこの味を、どうしても食べたくなるのだ。

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話を聞いてみると「自分の子どもに食べさせたいと思えるような場所で、私自身が食べていたのは、とても幸せなことだった」(1994年度卒業生)、「当時は気づいていなかったけれど、大人になってからジャンクフードとの味の違いに気づきました」(1994年度卒業生)、「体は食事によって作られているんだと、厨房のだしをとる鍋を見て感じていました」(1993年度卒業生)といった声が。

「食材や作る過程といった食堂の在り方そのものに、多感な時期の心と体を支えてもらっていました。この食堂の食事を通して得たものは味覚です。一生の宝物です」(1992年度卒業生)という言葉まで聞かれるほど。「奇跡の食堂」の食事は、6年かけてじわじわと一人ひとりに浸透し、確実にその人間性を形作っているのだ。

食堂には笑顔があふれる 撮影/井上孝明

そんな卒業生たちから「また食べたい」という声がいちばん多く上がるのが、カレーライス。食堂スタッフがインドで学んできたレシピがベースだというチキンカレーは、市販のルウに頼らず、なんとスパイスの空煎りから始めるのだという。少し手間をかけると「いつもの家庭料理」もこんなにおいしくなるのだ、としみじみ思える一品のレシピを、ここでご紹介しよう。