生徒の父母たちが運営をスタート

お昼のチャイムが鳴ると同時に、食堂にはお腹をすかせた生徒たちが押し寄せる。

人気のメニューにはぎょうれつができて、あっという間に売り切れる 撮影/井上孝明

この食堂、じつは35年前の学園創立時、「我が子に安全でおいしいごはんを」と願う生徒の父母たちが運営をスタートさせたというユニークな経緯を持つ。普通のお父さん、お母さんたちが、インターネットもない時代に手探りで、本当に安心安全な食材の生産者を探すところから始めて理想を実現した「奇跡の食堂」なのだ。

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食材庫に並ぶのは、有機無農薬栽培のお米や野菜、抗生物質などを使わないで育てられた畜産物、昔ながらの製法で作られた保存料など無添加の調味料……。昆布と削り節をふんだんに使ってだしをとるのは毎食のこと。天然酵母でパンを焼き、うどんも手打ち。子どもたちが大好きな揚げ物に使うのは、なんと溶剤を使わず圧搾した一番搾りの菜種油。そこに広がっているのは、大量調理の現場では通常「コストがかかりすぎる」と実現しないような光景だ。

野菜も調味料も厳選した生産者やメーカーから仕入れられている 撮影/石井徹尚

これは、育ち盛りの子どもたちの心、体、そしてアタマを健やかに形成するのは食だという信念に支えられているからこそ。開校時より、食堂を運営する組織は「食生活部」と名付けられ、数学科や社会科といった学科と同じく学園の一部門と位置づけられていることからも、食育がいかにこの学校で大切にされているかが窺える。

もちろんまだ10代の生徒たちは、自分たちがいかに贅沢な食生活を送っているかにあまり気づいていない。放課後にファーストフード店に寄るのを楽しみにしている子どもたちだってたくさんいる。そもそもメニュー自体は、ハンバーグ、コロッケ、からあげ、カレー、スパゲティなど、一見ごくごく普通の家庭料理なのだ。