「自由の森学園」という学校をご存知だろうか。埼玉県にある中高一貫校だ。点数序列主義に迎合せず、個の自立を大切に育むことを教育理念とする学校には、全国各地から生徒が集まっている。家が遠くて通学できない2割ほどの生徒は寮生活を送る。寮生が一日3食を食べるのは学食。またお弁当を持参しない通学生も、学食で毎日のお昼を食べることになる。

その学食のメニューは、卒業生たちにとって、大人になってから家族を連れて食べに来ることもあるほどに「心の味」になっているのだという。「あの味を家庭でも再現したい」という声に応えて刊行されたのが『日本一の「ふつうの家ごはん」 自由の森学園の学食レシピ』だ。

卒業生でもある担当編集者の下井香織さんに、自由の森学園についてと、そのごはんの魅力を実際のレシピとともに紹介してもらった。

最寄りの飯能駅からスクールバスで15分。最寄り駅が最寄っていない場所に、自由の森学園はある 撮影/井上孝明
自由の森学園の食堂。ここで生まれる「心もアタマも豊かに育てるごはん」とは…撮影/井上孝明

35年前に開校した「自由な学校」

埼玉県飯能市。駅からバスに揺られること15分ほど。こんな山の中に? というほど深い自然の中に、自由の森学園が開校したのは35年前のことだ。

今では、ミュージシャン・俳優の星野源が、中高の6年間通ったとして語られることの多い自由の森学園。彼が、2000年にバンドSAKEROCKを一緒に結成した浜野謙太(ミュージシャン・俳優)と出会ったのもこの学校でのこと(2015年に解散)。彼らだけではない。コーネリアスのMVや数々のCMで知られる映像作家の辻川幸一郎、漫画家・広江礼威(『BLACK LAGOON』)、ミュージシャンの永積タカシ(ハナレグミ)、俳優の吉岡秀隆など、数々のアーティスト、クリエイターを輩出している。

星野源自身、最近出演したバラエティ番組で、音楽や演劇に打ち込むようになったルーツのひとつは「自由なところだった」この学校にあると語っている。個人の自主性を重んじ、校則も制服も定期テストも存在しない自由の森学園。有志による演劇やライブなども行える多目的ホールを備えるほどに、生徒たちの表現活動を尊重しているこの学校は、たしかに10代の感性を豊かに育むのに絶好の環境なのだろう。

休み時間の生徒たち 撮影/井上孝明

休み時間や放課後には、生徒たちが思い思いに奏でる音楽や、友人同士で声を合わせた歌声がそこかしこから聞こえてくる。点数で生徒を評価するテストや成績表がない自由の森学園では、どんな教科も、自分自身の心とアタマを通して何をつかみとったのかを踏まえたレポート提出が課題となっている。踊りや和太鼓に取り組む体育や、一年中合唱に取り組む音楽でも、競争したり、テクニックを身につけることではなく、表現する自分の体と向き合うこと自体が大きなテーマだ。点数や偏差値といった相対的な評価に頼らないこれらの学習体験が、「自分にしかできない」表現を目指す感性を育てるのだ。

そしてこの学校にはもうひとつ、生徒たちの心身を育む大きな存在がある。それが食堂だ。あたりにコンビニひとつない山の中。お弁当を持参する生徒以外は、学食で毎日のお昼を食べることになる。とくに、700人ほどの全校生徒中、130人ほどいる寮生の一日3食を支えているのは学食だ。