爆発的ブームの「スパイスカレー」が、カレー界の常識を打ち破るまで

原価が高い、体にいい、並んでも食べたい
高橋 洋太 プロフィール

全国トップの人気店に聞いてみた

では、カレーを提供する店舗の側は、この人気をどう見ているのか。筆者は今回、東京スパイスカレーブームの中で注目したい2店舗の店主に話を聞いた。

新宿区大久保に店を構えるスパイスカレーの有名店「SPICY CURRY 魯珈(ろか)」は、SARAHの全国カレー人気口コミランキングで1位の人気を誇り(2019年10月上旬現在)、食べログ「100名店2019」にも選出されている。店主・齋藤絵理さんは、自身も大のカレーオタクだと語る。

──お店の名前にもなっている「ろか」は、台湾料理で有名な「魯肉(ルーロー、煮豚)」と「カレー(珈)」から取られていると伺いました。台湾料理とカレーは、珍しい組み合わせですよね?

ろかプレート(SPICY CURRY 魯珈)

「大学生の頃、渋谷の魯肉飯専門店でアルバイトをしていたこともあり、『大阪スパイスカレーのキーマを魯肉にしたら面白いんじゃないか?』と思って挑戦しました。初めて提供するときは、お客さんがどういう反応をするか不安でした。時代がほんの少し前だったら、キワモノ扱いされるだけの可能性もあったと思います。

ただ、カレーはいま本当に自由に楽しめる時代になりました。従来とは違う変わり種のカレーが、スパイスカレーの波に乗って受け入れられやすくなっていると思うんです。最近は中華料理店でもいろんなスパイスが使われるようになっているので、お客さんのほうにも受け入れる土台が整っていたのかもしれません。台湾料理である魯肉飯にも八角、クローブなどカレーと通ずるスパイスが使われているので、スパイスカレーと相性がよかったんです」

「魯珈」では変わり種の週替りカレーが名物になっている。このカレーは、過去一度も同じメニューを出したことがない、一回きりの「限定カレー」で、これを目当てに毎週通うリピーター客も多いという。

ラムミントカレー〜ミントやパクチーの緑色のカレー〜
すだちで頂く!鯖の塩麹カレー
ゲーン・ルアン〜タイ南部風辛口ココナッツカレー〜

──限定カレーの発想はどこから生まれているんですか?

「私の場合は、カレーに限らずラーメンの食べ歩きなどもして発想を得ています。カレーとラーメンは似ている部分もあって、動物・魚介のダブルスープを使っているラーメンも多いので、インスピレーションを受けています」

──メニュー名だけでは味が想像できないので、食べてみたくなりますね!魯珈さんのように、複数の食文化が入り混じっているような、独創的なメニューのお店が多いのも、スパイスカレーの良さかもしれません。

「そうですね。お客様からも、どんな味か想像できないとよく言われます(笑)。『今まで誰も食べたことのない味だけど、絶対に美味しいもの』というルールでメニューを作っています。試作品はつくらず、『脳内調理』と呼んでいるんですが、頭の中で調理をして、あとは味見をして整えるような作り方です。

 

自分自身、もともとカレーやラーメン、お肉が大好きなので、自分の好きなものをスパイスカレーを通して個性的に世に出せることが嬉しいですね。スパイスカレーは従来のカレーよりも自由なので、一種の自己表現の手段だと感じているお店の方も多いかもしれません」

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