7人に1人が貧困に…貧しさを生きる、看過できない「子どもの現実」

児童書が「貧困ジャーナリズム賞」を獲ったワケ
片寄 太一郎 プロフィール

このたび受賞した『むこう岸』という作品は、今年5月、第59回日本児童文学者協会賞を受賞しています。こちらの賞は、幼年向けの童話からYA(ヤングアダルト)まで、まさに児童書に贈られる文学賞です。

つまり、フィクションとノンフィクション、両方の世界から評価を受けた作品といえます。物語の内容を簡単に説明します。

 

対岸の和真と樹希

小さなころから、勉強だけは得意だった山之内和真(やまのうち・かずま)は、必死の受験勉強の末に有名進学校に合格しましたが、トップレベルの生徒たちが集まる環境で埋めようもない能力の差を見せつけられ、中三になって公立中学への転校を余儀なくされました。もちろん中学では、転校の経緯を隠して生きています。

ちっちゃいころからタフな女の子だった佐野樹希(さの・いつき)は、小五のとき事故で父を亡くしました。父の飲酒運転が原因でした。残された母と娘でしたが、そのとき母のお腹には新しい命が宿っており、いまは母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしています。

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ふとしたきっかけで顔を出すようになった『カフェ・居場所』で、少年と少女は互いの生活環境を知ることになります。和真は「生活レベルが低い人たち」と樹希に苦手意識を持ち、樹希は「恵まれた家で育ってきたくせに」と、和真が見せる甘さを許せません。

反目する二人でしたが、二人とも「貧しさ故に機会を奪われること」に不条理と怒りを覚えます。中学生の前に立ちはだかる「貧困」というリアル。しかし、「貧しいからといって、樹希は進学するという将来の夢をあきらめなくてはならないのか」という問題に対して、彼ら自身が手探りで一筋の光を探し当てます――。

以上が、物語のおおまかな内容です。

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