良く分からない人達が団体を立ち上げまくるeスポーツという「地獄」

「eスポーツは金になる」という幻想
但木 一真 プロフィール

ここは豊饒な土地ではない

eスポーツはゲームを使って行う興行であり、ゲーム会社は多くの金を投資して興行を運営する必要がある。テンセント、アクティビジョン・ブリザードといったeスポーツに力を入れる海外の企業は興行のエコシステムに多額の投資を行ってきた。

エコシステムとはすなわち、興行に参画するチームや制作会社、人材を育成する学校、メディアといったステークホルダーがそれぞれメリットを享受できる仕組みのこと。eスポーツをビジネスとして成立させるためには、これらのステークホルダーに対してゲームの収益を還元することが不可欠なのだ。

エコシステムに対する投資が如実に現れるのが賞金額だ。『Dota 2』世界大会の賞金総額は約36億円、『フォートナイト』世界大会の賞金総額は約32億円にのぼる。海外のゲーム企業はこれだけの金額をチームや関連ステークホルダーに対して還元し、興行のエコシステムを維持しているのだ。

 

日本のゲーム企業はここまで大きな投資を行うには至っていない。eスポーツという新しい形態のビジネスを模索している段階であり、eスポーツ専門の部署が社内に設立されたばかりという企業も少なくない。

株式会社Gzブレインの試算によれば、2018年の国内eスポーツ産業の規模はわずか48億円だ。この規模では企業が楽観的にビジネスを行えるような場所とは言えない。

現在の日本のeスポーツ産業に必要なことは、ゲーム企業が更なる投資を行うことであり、その投資に見合った需要を喚起することだ。より多くのユーザーがイベントのチケットを購入し、飲食し、グッズを購入し、ゲーム内でアイテムを購入し、動画配信サービスを通じてコンテンツを視聴する。これらの経済活動が活発化すれば、エコシステムにも金が循環し始めるだろう。

eスポーツ産業のステークホルダーはユーザーと向き合い、どのようにしてこれらの経済活動を促進できるのかを考えなければならない。

いまは土地を耕さなければならないのだ。

そんなさなかに、虎の威を借る団体が次から次へと現れ、「我こそは代表である」と名乗りを上げている。eスポーツ産業で働いていれば、否が応でも新しい団体の噂が耳に入り込んでくる。トラブルの火種になるような団体がまた一つ、また一つ。そのたびにeスポーツからユーザーが離れていくだろう。

私はこれらの団体にはいち早く産業から退出頂き、eスポーツの振興を心から願うコミュニティや団体に道を譲ってほしいと願う。有名人や地元有力者の支援が団体の信用を補完することは無いし、浅薄な考えで団体を立ち上げた者が欲する莫大な金や権利は、今のところ日本のeスポーツ産業には見当たらないのだから。