2019.11.04
# 免疫学

子供がかぜをひいても、「受診」や「かぜ薬」が必須ではない理由

押さえておきたいかぜの自然経過

小児のかぜの原因は、ウイルスが80〜90%以上と大半を占めます5。抗生剤は基本的に細菌には有効ですが、ウイルスに有効性を発揮することはありません。

小児のかぜに抗生剤を投与して、かぜの症状の期間短縮効果や合併症の予防効果があるかを検討した研究があります6

 

2013年にコクランデータベースから報告された研究結果によると、小児のかぜに抗菌薬を使用しても、かぜが早く治るような効果は認められませんでした。

小児のかぜの合併症として多いのは中耳炎(15%)や気管支炎・肺炎(5%)などが挙げられます。抗菌薬を早期に使用した場合、中耳炎を予防する効果は認められていますが、20人以上投与して、ようやく1人だけ予防できるレベルです。

肺炎や気管支炎に至っては、予防効果ははっきりと認められていません。これは小児の肺炎や気管支炎は8割近くがウイルス性であるためです。

さらに、まれな合併症として扁桃周囲膿瘍や乳突蜂巣炎などがありますが、これらの合併症は4000人以上の小児のかぜに抗菌薬を投与して、ようやく1人予防できるレベルです。

これらのデータをみると「かぜに抗菌薬」で、合併症を予防するのがあまり現実的ではないことも、ある程度は理解できるのではないでしょうか。

「とにかく薬を」が逆に危険な理由

咳止めや鼻水止めといった、一般的な「かぜ薬」はどうでしょうか。

小児の咳止め薬(鎮咳薬)として処方されるものとして、デキストロメトルファン (メジコンなど)やチペピジン(アスベリンなど)があります。

「咳止め」と言われるくらいなので、小児のかぜによる咳を止めてくれそうなイメージですが、本当にこれらの薬で咳止め効果があるのでしょうか。実際に検証した研究は複数あります。

たとえば、デキストロメトルファンが小児のかぜの咳を和らげるか検討した研究では、咳止め効果を認めていません7,8。チペピジン(アスベリンなど)は日本国内でよく処方されている鎮咳薬です。この効果について2019年に日本国内の小児を対象として研究されましたが、十分な咳止め効果はありませんでした9

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「鼻水を止めてほしい」と外来でお願いされることもあります。鼻水止めとして処方される薬の中に、第一世代の抗ヒスタミン薬があります。

代表的なものですと、ジフェンヒドラミン(レスタミンなど)、クロルフェニラミン(ポララミン)、ヒドロキシジン(アタラックス)やシプロヘプタジン(ペリアクチン)などです。

また、これらの薬は小児の市販薬にもよく含まれています。これらの「鼻水止め」ですが、実際に鼻水をはじめとしたかぜ症状を軽快させる効果があるのか検討した複数の研究10-12では、ほとんど有効性は認められていません。

一方で、これらのかぜ薬には有効性がないばかりか、副作用もつきものです。たとえば、第一世代の抗ヒスタミン薬は、眠気や易刺激性(イライラしやすくなる)といった副作用や、熱性けいれんを起こしやすくしたり、けいれんの持続時間を長引かせる可能性も示唆されています13-15

「かぜをひいたら早めに受診して、早めに薬を飲んで治そう」というのは、一見すると理にかなっているように見えてしまいます。

しかし、実はかぜに有効な薬はほとんどないばかりか、本来は不要な薬を処方され、不必要な副作用のリスクを背負うことになります。

ポイント
・かぜに有効な薬はなく、本来不要な薬を使用すると副作用のリスクが増す

乳幼児は1年で5〜6回のかぜをひく

「こどもがかぜを繰り返して心配です」と外来で相談されることがありますが、ほとんどのケースで「かぜを繰り返すのは自然な経過ですよ」とお答えします。

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