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子供がかぜをひいても、「受診」や「かぜ薬」が必須ではない理由

押さえておきたいかぜの自然経過

秋から冬にかけての「季節の変わり目」はかぜが流行します。

小児ではRSウイルスやインフルエンザなどをはじめとしたウイルス感染症が増えるのもこの時期で、小児科外来も秋・冬は非常に混雑します。

成人と比較して小児はかぜにかかりやすく、繰り返すケースが多々あります。ほとんど軽症で済んでしまうため軽視されがちですが、何度もかかるからこそ、かぜの自然経過を知っておくことは重要です。

小児科外来では「かぜをひいたので早めに受診して、早く治そうと思いました」「かぜを治す薬をください」と相談にくる保護者がたくさんいます。

あえて結論を先にお伝えしますが、早く受診してもかぜの治りは早くならないですし、そもそもかぜに有効な薬はありません

今回の記事では、かぜの自然経過をお伝えしながら、かぜに有効な薬がないという根拠と、小児科外来への受診の目安を解説しようと思います。

※本文中にエビデンスを示す番号が振ってある箇所がありますが、この記事ではスペースの都合上、参考文献一覧は省略いたします。詳細は著者ホームページ「参考文献」をご確認ください。

「かぜがいつ治るか」は小児科医もわからない

「鼻水はどのくらいで治りますか?」
「咳がなかなか治りません」
「明日には熱が下がって、元気になりますか?」

私たち小児科医が、外来で非常によく受ける質問です。保護者の視点からすると、非常にシンプルで単純な質問ですが、実はこれらの質問に答えるのに窮してしまう瞬間はあります。

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それぞれのご家庭には仕事や週末の予定があるでしょうし、1日でも早く子供の体調の回復を願うのは、保護者としては自然なことです。「自分の子供がいつ治るのか」をあらかじめ予測しておくことで、家庭の予定の調整をしたい方もいるでしょう。

保護者の方々には「無責任」と言われてしまいそうですが、どんなベテランの小児科医でも、どんな名医でも、あなたのお子さんの症状がいつ治るのか予測するのは困難です。

 

ひょっとしたら、「明日には良くなりますよ」「かぜなら数日で良くなりますよ」ともっともらしく言う医師がいるかもしれません。ですが、そういった医師は、おそらく気休め程度に言っているのです。そうでないなら、本当にかぜの経過を知らないのかもしれません。

子供を見慣れている小児科医でも、目の前の患者が何日後にかぜの症状が軽快するのかを予言することは困難なのです。

そのかわりに、過去の研究結果やガイドラインを遡ることで、「かぜは平均的に何日くらいで軽快するか」はお答えすることはできます。

最大8週間!? かぜの症状ってそんなに続くの!?

まずは、イギリス1とアメリカ2のガイドラインを参照してみましょう。それぞれのガイドラインには、小児のかぜ症状が「平均して」どのくらい続くのかの目安が書かれています。

  イギリス アメリカ
咽頭痛 1週間 1〜2週間
鼻汁・鼻づまり 1.5週間 〜2週間
3週間 2〜8週間

たとえば、喉の痛み(咽頭痛)は1週間前後続くと書かれています。鼻水は2週間前後、咳は数週間程度続くことはよくあります。

「少し長いのでは?」と感じる保護者がいるかもしれません。逆に「やっぱりこのくらい続くのか」と共感される方も中にはいるかもしれません。

実際、「先週からかぜをひいて、1週間前後様子を見ていたのですが、治らないので受診しました」と外来に来られる親子は多くいます。

実は、小児のかぜはすんなり治らないものです。鼻水や咳が長引くことは非常によくあります。

エビデンスから見たかぜ症状の「期間」

「本当に咳や鼻汁が1〜2週間も続くのでしょうか?」と思われる方もいるでしょう。