「CO2を排出せずに」燃やすには…? 炎に魅せられた研究者が語る

カギを握るのは「純粋な酸素」
新版・窮理図解 プロフィール

というのも、研究室のボスの丸田薫先生は国際色豊かな方で、研究室に海外の著名な研究者がしょっちゅう訪ねて来るのです。そこでグローバルなコミュニケーションの大切さを学び、一気に視野が広がりました。

それまでも海外の学会で発表するなど、外に目を向けているつもりでしたが、レベルがまるで違っていました。研究を進めるための本質的な議論を、グローバルに展開することの必要性を痛感したポスドク時代でした。

そこで、海外留学を決意して、日本学術振興会のポスドクとして2005年4月から1年間、プリンストン大学へ留学することにしたのです。プリンストン大学といえば、物理や数学、経済の分野で有名なイメージがありますが、燃焼の分野でも非常に歴史のある研究機関なんですね。

──海外での研究生活はいかがでしたか?

大変でしたね。最初は住む所も決まっていなくて、2週間くらいは先生などのお宅を転々としながら住まい探しをしました。当時は英語もたどたどしい状態でしたし、わずか2週間でホームシックにかかったほどです(笑)。

プリンストン大学 Photo by iStock
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研究は楽しかったけれど、海外での生活に慣れるまでちょっと時間がかかりましたね。研究室の人たちは私に配慮してしゃべってくれるのでそれほど会話には困りませんでしたが、いったん街へ出ると、当然のことながら皆しゃべるスピードが速く、スラングまじりだったりで、なかなか聞き取れなかったりして……。銀行口座ひとつ作るのにも苦労した思い出があります。

大学にも、日本人はほとんどいなくて、別の学科に1人いたくらいだったでしょうか。むしろ中国から来ている留学生を多く見かけましたね。実は私の指導教官もYiguang Ju教授という中国人の方です。

この先生は、先ほどの東北大の丸田先生同様、海外に目を向けていると同時に、理路整然と考えて物事を進めることができるたいへん頭のいい方でした。性格もとてもよくて、研究者として憧れの存在です。

世界の優秀な人たちと議論できるような留学を

──やはり海外に出ることは必要でしたか?

ええ。世界中から集まってくる優秀な人たちと議論できる環境に身を置くというのは、非常に重要でしょうね。四六時中研究のことばかり考えている研究者たちとつねにディスカッションをして、皆で考えていくスタイルを経験できたのはよかったと思います。

また、プリンストン大学ではランチをとりながらディスカッションすることがあり、いい勉強になりました。もちろん、日本でも学生と息抜きで飲んだりはしますが、欧米ではランチの時間やお茶の時間が研究に関するコミュニケーションの場として機能しているんですね。ですから、休憩時間というよりは、研究の延長線上の貴重な時間という印象があります。

プリンストンではランチを食べながら議論することが多い Photo by iStock
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研究者であれば、できるだけ早めに、30歳くらいまでには一度、海外へ出たほうがいいでしょうね。

──研究者として大切にされている信条はありますか?

研究のアイデアというのは、ある日突然、突拍子もないところから生まれてくることはありません。ひとつひとつ積み重ねて、はじめて形になるものだと思います。つまり、日々コツコツと努力をすることが大切です。

もちろんうまくいかないこともありますが、がんばっていればいつか出口は見えてくるもの。そうやって何かをつかむことができれば、大きな達成感を得ることができる。実際に、研究の中でそういう喜びを感じた瞬間が、幾度かありました。それこそが研究者としての醍醐味でしょう。

横森剛(よこもり・つよし)
埼玉県出身。1998年、慶應義塾大学理工学部 機械工学科卒業、2003年同大大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻博士課程において単位取得満期退学。2004年3月博士(工学)。東北大学流体科学研究所産学官連携研究員、日本学術振興会特別研究員、米国・プリンストン大学航空宇宙・機械学科客員研究員を経て、2007年4月より慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師。2013年4月より現職。

取材・構成 田井中麻都佳
写真 邑口京一郎
デザイン 八十島博明、石川幸彦(GRID)
編集協力 サイテック・コミュニケーションズ

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