全国紙でも進む「リストラ・支局統廃合」新聞記者の苦悩と見えぬ未来

生き残りの道はあるのか?
松岡 久蔵 プロフィール

地域密着で「黒字化」の地方紙も

苦境に直面する地方紙の中には、「地元に根付いた情報を提供する」という原点に戻って生き残りを図ろうとする社もある。

和歌山市で唯一の日刊地方紙「わかやま新報」は、7年前に史上最年少の35歳で新聞社の社長に就任した津村周氏の下で、経営再建に取り組んできた。津村氏は地域紙の最大の武器である「地域とのつながり」をビジネス面で強化してきたと話す。

「地域紙で一番読まれるニュースは、訃報などの冠婚葬祭関連や、子供の成長が見守れるような野球大会などのイベント関連なんです。

わかやま新報でも、以前の紙面は地域の出来事や事件といったストレートニュースがメインだったんですが、新聞社最大の経営資源である『記者の記事制作能力』をもっと活かせないかと思い、オーダーメイドで結婚式や同窓会、新生児の誕生などに合わせた『プライベート新聞』を作る事業を拡大していきました。

地道な事業に思われるかもしれませんが、それまで赤字続きだった弊社は、私が社長に就任してから3年で黒字化に成功しました」

 

津村氏は、和歌山県南部をカバーする地方紙「日高新報」会長の津村尚志氏の次男として生まれた。当初は、新聞社の経営者として父と同じ道を進むことになるとは想像もしていなかったという。

「私は和歌山市ではなく、県中部の御坊市で生まれ育ちました。父は日高新報の記者でしたが、編集長時代には真夜中に抗議の電話が自宅にまでかかってきたり、家に誹謗中傷の落書きをされたりして、『こんなとんでもない仕事、絶対やりたくない』と思っていましたね(笑)。

そんなわけで、関東で全く新聞とは関係のない仕事をしていたのですが、父が縁あってわかやま新報の社長に就任したことを機に、地元に尽くせる仕事がしたいと一念発起して、営業社員として入社しました」

ただ、和歌山県でも過疎化は深刻であり、逆風が吹いていることは変わりがない。和歌山市の人口は1983年の約40万3000人をピークに減少が続いており、2018年には約35万7000人まで減少した。

「実際、部数が伸び悩んでいる影響もあり、せっかく取材力を身につけた中堅記者が結婚を機に退社するという苦い出来事もありました。その経験から、少額であっても毎年必ず昇給するようにしていますし、社員が少しでも長くニュースを作り続けてくれる環境作りを心がけています。

わかやま新報は、発行部数約2万部と地方紙の中でも規模が小さい部類に入りますが、地域のことを知り尽くし、深い記事を書けるという点ではブロック紙や県紙にも負けません。テレビや新聞など大メディアの影響力には敵いませんが、地元の読者とともに歩んできたという実績で勝負したいと考えています」

編集部からのお知らせ!

関連記事