なぜ40代は「若者の童貞化」を許せないのか?

「ヤラハタ」という呪いがあった時代
トイアンナ プロフィール

実際にヤラハタを意識したことがあるという、43歳のAさんから話を聞いた。Aさんは地方都市で医療事務をしている女性で、10代のころはファッションやトレンドに敏感な方だったという。

Aさん:あのときは童貞と付き合うなんて、ありえないっていう価値観があったよね。だって、童貞だとデートも下手だし、エッチも下手じゃないですか。絶対に経験豊富な人と付き合った方が楽しいし、エッチも気持ちいい。

――セックス以外でも、男性が恋愛でリードすべきという考えは定着していましたか。

Aさん:そりゃそうよ。若い子はワリカンでもデートするなんていうけど、ありえない。「奢ってもらえないんだったら帰る!」って、実際に帰っちゃう子もいるくらいですもん。奢りっていうのは誠意の証。ワリカンっていうのは「あなたになんか、興味ないですよ。このお店で解散したいから空気を読んでとっとと帰ってね」っていう意思表示です。

まあ、今のご時世で私も奢りを要求はしませんけどね……。それでも、同年代なら初デートでワリカンは傷つくって人の方が多いんじゃないかな。

 

――セックスにおいても、男性が「こうすべき」という価値観はありましたか。

Aさん:まず、やりたいって誘いは男性からしかありえないですよね。童貞君なんかはその辺がこう、モジモジしちゃって意気地がない。最中も男性が体位を決めたり、動いたりするわけじゃないですか。女の子なんて寝っ転がってるだけなんだから。そこで男がこうバシっと動けないんじゃ、ねえ。一体どうするの? それエッチとして成立すんの? って感じですよ。

――けれど、生まれたときは全員童貞か処女ですよね。それなのに童貞が恥ずかしいと避けられるなら、男性は初体験をどう済ませてきたんですか。

Aさん:私は女だから知らないけど、風俗でとか、同年代の彼女と高校生のときに……ってのが一番多かったんじゃないですかね。さすがに同学年、同年代とのエッチなら童貞でも仕方ないじゃないですか。で、18歳にもなると「ヤラハタになっちゃう」ってあせる子も出て、ぱぱーっと(童貞や処女を)捨てちゃう。

実は、Aさんが20代を過ごした1990年代においても20代の童貞率は3割台。つまり、3人に1人は世間からヤラハタのプレッシャーを感じながらも、脱童貞を果たさなかったことになる。

中には童貞ではないと嘘をついたり、前戯を「やった」にカウントしたりと、童貞を隠そうとする人もいただろう。当時の童貞は、いまよりもずっと生きづらそうだ。