世界が震撼したテロ…丸腰の人々が過激派テロリストに立ち向かった

実話を映画化した監督が語る衝撃の事実

今年8月、アメリカ・カリフォルニアにあるモールで銃声が聞こえたとして、ショッピング客たちがパニックに陥る騒動があった。そのうちの一人の女性が自分たちの隠れ場所をツイートすると、「犯人に隠れ場所が分かってしまう」「ホテル・ムンバイのことを忘れたの?」などと、彼女のツイートに批判が集中。結局、銃声は聞き間違いで怪我人は出なかったのだが、みなが言及した「ホテル・ムンバイ」というのは、実際に起こったテロのことだ。

 

五つ星ホテルにテロリストが3日間籠城…

『ホテル・ムンバイ』より

2008年11月26日、インド・ムンバイが誇る5つ星ホテル「タージマハル・パレス・ホテル」を、隣国パキスタンから海を渡り上陸した若いテロリスト集団が襲撃。100年近くもの歴史のある、ムンバイのアイコンであるこのホテルにはその時、1000人以上の宿泊客と、500人以上の従業員がいた。10人からなるテロリスト軍団は3日間にわたり籠城し、次々と人質を殺害していった。

宿泊客の避難場所や状況はテレビやSNSで報道され、テロリストたちはメディアから宿泊者の情報を得ていたという。だが、勇気あるホテルマンたちが自分の誇りと命をかけて宿泊客を救い、多くの人々が生還を果たした。そして、事件後もリノベーションを経てホテルは再オープンし、現在でも象徴的存在としてその地に立つ。

この実話を徹底的にリサーチし、映画化した作品『ホテル・ムンバイ』が、現在公開中だ。

『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)のデヴ・パテルや『君の名前で僕を読んで』(2017)のアーミー・ハマーなど豪華キャストを迎えた本作は、異なるバックグラウンドを抱えた人々が心を一つにする、人間の“善”だけでなく、若者をテロリズムへと追いやる“悪”をも緊迫感ある映像で容赦なく浮き彫りにする。

米エンタメ誌「バラエティ」で「2018年注目すべき映画監督10人」に選ばれ、本作で華々しく長編映画デビューを飾ったアンソニー・マラス監督に電話インタビューを行い、本作の制作過程で知った驚きの事実やテロリストの心理について聞いた。

アンソニー・マラス監督

これは、よくあるテロ事件ではない

――これまで短編映画を作ってこられた監督ですが、なぜ今回、タージマハル・ホテル襲撃事件を映画化しようと思ったのですか?

アンソニー・マラス監督(以下、マラス監督): この映画を作ろうと思ったのは『Surviving Mumbai』というドキュメンタリー映画がきっかけです。このドキュメンタリーを観る前までホテル襲撃事件のことはテレビやニュースからしか知らなかった。つまり、ホテルから逃げる人たちの苦痛に満ちた顔や燃えているホテルーー典型的なテロ事件として見ていました。

ところが、このドキュメンタリーから、この事件は“人間の物語”だということに気が付きました。この事件はよくあるテロと違い、3日間も続いたんです。ホテルの宿泊客や従業員たちは、キリスト教徒、ヒンズー教徒やイスラム教徒など、世界中の宗教的・社会的・経済的バックグラウンドをもった人たちで、彼らは生き延びるためにどうしても団結せざるを得なかった。ホテルの従業員と富裕層、キリスト教徒とイスラム教徒……普段なら交流しない人たちが、お互いを助け合ったのです。

『ホテル・ムンバイ』より

しかも、実際の事件では、ホテルから脱出できたのに、同僚を助けようとまたホテルに舞い戻った従業員が何人かいたんです。「これが自分だったら同じことができただろうか」とずっと考えていて、なんとしても映画化したかったんです。