『なつぞら』が描いた「昭和アニメ」の圧倒的魅力を振り返る

こんなにたくさんの作品があった
堀井 憲一郎 プロフィール

『わんぱく牛若丸』は、あらためて『わんぱく王子の大蛇退治』だけがモデルの作品ではないだろうということである。当時の子供として(幼稚園児でしたが)、この覚えにくいタイトルが人気だった印象が皆無だから、そうおもう。これが当時の東映の代表作品ではない。

 

子ども心に「色香」を感じたアニメ

昭和38年は日本製TVアニメが本格的に始まった年でもある。

それ以降、劇場用の長編アニメの人気が落ちていく。たしかに昭和40年代に入ると子供たちはテレビアニメに熱狂しだした。

先にドラマの「劇場アニメ」について触れるなら、まずなつたち若手だけで作った『ヘンゼルとグレーテル』がある(86話/7月9日より)。

もうひとつ『神をつかんだ少年クリフ』(105話/7月31日)が一久さん(中川大志)をメインに制作された。どちらもいい作品であるのに、受けなかったという設定になっている(『ヘンゼルとグレーテル』はずっと公開されなかった)。

東映長編アニメの失敗作としては1968年(昭和43年)『太陽の王子 ホルスの大冒険』がある。おそらく、それが意識されているとはおもうが、両作品のきちんとしたモデルというわけでもないだろう。このあたりは、それらしい部分とそうでもない部分をわざと混在させていたようにおもう。

当時の子供は、テレビのアニメに熱中しはじめる。きっかけは昭和38年、1963年に始まった『鉄腕アトム』である。熱心に見ていたが、記憶が断片的である。それより鮮明に覚えているのは同年10月に始まった『鉄人28号』で、これは日曜の夜の8時開始という、子供向けアニメとしては遅い開始だったので第一話の記憶が鮮明である。

『なつぞら』では、97話(7月22日)から『百獣の王子サム』の制作が始まる。これは見た瞬間に、あ、『狼少年ケン』だとわかる出来になっていた。絵もオープニングのテーマ曲も似ていた。

この『狼少年ケン』を始めとしたアニメに、私は、とても不思議な色香が漂っていたように記憶している。あくまで個人的な感想、当時の子供としての感想であるが、不思議な妖しい空気を強く感じていた。

たまたまそういう時期だったのか、製作者の意図だったのか、この時期の少年アニメには妖しい雰囲気があったのだ。いや、物語や展開はストレートに子供向けである。でも熱心見てる子供がくらっとしてしまう何かがあった。絵やシーンではなく、雰囲気にあったんだとおもう。