『なつぞら』が描いた「昭和アニメ」の圧倒的魅力を振り返る

こんなにたくさんの作品があった
堀井 憲一郎 プロフィール

「日本もの」が興隆した時代

ヒロインなつが、漫画動画会社に入って最初に参加した作品が、長編まんが映画の『白蛇姫』だった(55話/6月3日)。

これは東映の『白蛇伝』である。昭和33年の作品なので、私は見ていない。でもタイトルと絵を見た瞬間に、あ、白蛇伝、と反射的にタイトルが出てきた。それに見ていて、なぜか、とても懐かしく感じる。ひょっとして一部を見ていたのか、もしくは東映の似たような作品から連想したのかもしれない。日本の長編アニメ作品第一作ということで、有名な作品でもある。

次になつが参加した作品は『わんぱく牛若丸』である(78話/6月29日)。

これは何の作品か、すぐには想像できなかった。おそらく制作側も特定してないとおもわれる。

東映動画は『白蛇伝』のあとは『猿飛佐助』を制作し、続いて『西遊記』『安寿と厨子王』を作った。日本人がまだ映画館で映画をたくさん見ていた時代である。

西遊記や、安寿と厨子王には何となく記憶があるが、はたして長編アニメ映画として見たのかどうかの記憶は曖昧である。

そのあとの東映作品は『シンドバッドの冒険』『わんぱく王子の大蛇退治』『わんわん忠臣蔵』となる。シンドバッドは見たような気がするし(同名の他作品である可能性もけっこうある)、『わんわん忠臣蔵』はタイトルごと強烈に覚えている。まだ私は小学校に入る前である。

ただ『わんぱく王子の大蛇退治』は覚えてない。大蛇をオロチと読ませて、そんなタイトルを幼稚園児が覚えるのは無理である(オロオロ王子のオロチ退治、くらいにしてくれれば覚えられたとおもう)。

 

ただスサノオのヤマタノオロチ退治の話だと聞くと、あ、という気分になる。なんか見たかも、という反応である。親に連れていってもらった可能性がある。

この時期の東映アニメには、「日本のもの」という印象が強い。

神話のスサノオ、古代の安寿と厨子王、戦国期の猿飛佐助、元禄時代の事件をもとにした忠臣蔵(ただ『わんわん忠臣蔵』は現代が舞台の犬の物語だけど)など、すべて日本題材である。

『なつぞら』の『わんぱく牛若丸』というアニメは、そのころの東映動画のいくつかの日本アニメイメージを混ぜたものだとおもう。作画部に入った主人公のいろんな悩みが反映された作品になっていた。

そのあとなつが参加した映画はポスターだけで何となく紹介されるにとどまった。
『どうぶつ三国志』(78話/6月29日)、『真田十勇士』『わんこう浪士』(97話/7月22日)などである(テレビ画面を静止して、山口智子の店に貼ってあるポスターからタイトルを読み取った)。
当時のいくつもの東映動画を適当に混ぜたタイトルだとおもわれる。