1970年代のウーマン・リブを牽引した伝説の女性であり、上野千鶴子さんをして「フェミニズムの原点。時代をあらわす固有名詞」と言わしめた田中美津さん。映像作家の吉峯美和さんは、その田中美津さんに4年間密着したドキュメンタリー映画『この星は、私の星じゃない』(2019年10月26日公開)を完成させた。前回は、70年代を席巻した田中さんに、当時3歳だった吉峯さんが惹かれ、密着をした理由について、吉峯さんに書いてもらった。

吉峯さんは、密着するにつれ、ウーマン・リブのカリスマである田中さんの「闘う女」とかけ離れた「女性としての生の顔」に触れていったという。吉峯さんが見た母であり、職業人である「カリスマ」の素顔とは何か。

吉峯さんの前回の記事はこちら

ウーマン・リブは子どもを産まない?

1970年代、日本の女性たちに大きな影響を与え、社会現象にまでなったウーマン・リブ運動。その伝説的なリーダーと聞いて、どんな女性を思い浮かべるだろうか。

私は強くて、厳しくて、下手なことを言うと怒られるんじゃないかとさえ思っていた。しかし、実際の田中美津さんは全く違って……小柄で、飄々として、おおらかな笑顔。ウーマン・リブを全く知らない世代の私は、4年前彼女の人柄とその言葉の力に魅了されて、初めての自主映画を撮り始めた。

公開まで1ヵ月、このところの試写などで改めて驚かされたのは、「田中美津」に貼りついてとれない「女性解放のカリスマ」というイメージだ。当時を知る男性は特に、「田中美津=闘う女」として尊敬していたと言い、この映画がそれとは別の、悩んだり迷ったりもする一人の女性であり母親である「田中美津」を描いていることに戸惑うようだ。

映画完成を盛り上げるトーク・イベントに快く協力してくれた、美津さんの旧知の男性たち、田原総一朗さんや原一男監督も、「え!!田中さんに子どもがいたの?結婚はしてない?誰が育てたの?一人で!!すごいね…」というふうなリアクションである。どうやら、ウーマン・リブは結婚もしなければ、子どももいない、女の幸せと言われるものに背を向けて、生涯かけて闘いに生きている女というイメージ(というかそうあってほしい願望)が強くあるらしい。そんなわけないでしょ!

集会の時の田中美津さん。映画『この星は私の星じゃない』公式HPより 撮影/松本路子