爆笑問題・太田光がハマった『お前はただの現在にすぎない』とは?

テレビとは何か、テレビに何が可能か
碓井 広義 プロフィール

半世紀後の『お前はただの現在にすぎない』

私がテレビマンユニオンに参加したのは、創立から約10年後の1981年だ。現在は、制作会社として大手の一つだが、当時はまだ規模も小さく、いわゆるベンチャーみたいなものだった。

採用試験は2年に1度。年齢・学歴・職歴・性別・国籍等、一切不問。1980年冬に行われた試験に挑んだ者、1600名。合格者は4名だった。

当時、村木が2代目社長を務めていた。新人4名が初めて揃った初日、私たちに向かって、村木は2つのことを言った。

「明日ツブれるかもしれませんが、それでもいいですか?」

 

4名のうちの2名は新卒。私ともう一人(女性)は社会人経験があった。私自身は、高校教師の職を辞して、テレビマンユニオンに参加していた。ここで「ツブれるかも」と言われても、すでに帰る場所はない。もちろん、村木は私たちの覚悟を問うたのだ。

この時、もう一つ、村木が言ったのは……

「組織に使われるのではなく、組織を使って仕事をしてください」

これに、シビれた。約40年も前に、新人に対して「組織に使われるな、組織を使って仕事をしろ」と迫る組織。これに感激したのだ。「明日ツブれてもいいや」と思った。以来、『お前はただの現在にすぎない』一冊と、この言葉を拠りどころに、20年にわたってテレビの仕事をすることになる。

2019年、すでに萩元も、村木も、吉川も故人となった。一人、今野だけは、元気だ。83歳の今もバリバリの現役演出家である。そして、テレビもまた「問い」を続けており、「現在」であり続けている。

今、太田光が精読しているという、『お前はただの現在にすぎない』。この本で太田が何を感じ、何を思い、何を考えたのか。別の機会に、太田自身のテレビ論を含め、ぜひ聞いてみたい。いや、私だけでなく、泉下の萩元や村木にも聞かせたいと思う。

それを聞き終わったら、今度は萩元が太田に対して、一つの「問いかけ」をするはずだ。ドキュメンタリー『あなたは……』で、829人の日本人に投げかけた、最後の質問である。

「最後に聞きますが、あなたはいったい誰ですか?」

(文中敬称略)

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