今、砂漠で「農業革命」が起きている。画期的なアイデア6選

進化を続ける最先端農業

サハラ砂漠、ゴビ砂漠、アラビア砂漠……。砂や岩が一面に広がる景色は日本人にはあまり馴染みがないが、地球規模で見てみると、地表の約4割は砂漠地帯といわれている。私たちが住む水の惑星地球は、実は砂漠の惑星でもあるのだ。TRANSIT44号では、世界中に点在する「砂漠」を特集している。

年々拡大している砂漠では、その広大な土地を利用してさまざまな実験や試みが行われている。いまや砂漠で食料をつくることだって可能になった。砂漠で実際に行われている最先端農業の技術を取材した。

取材協力:辻本 壽 イラスト:武田侑大

増えつづける不毛な土地

世界の人口は2019年5月時点で、約77億人。国連は、2050年までに人口が約98億人に増えると予測している。増えた人口を支えるには、2050年の食糧生産量を2009年の2倍にする必要があるという。

今、砂漠をフィールドに将来の食糧不足対策のヒントになるかもしれない農業革命が起きている。砂漠は、水も有機物も少ない乾燥地。だが実は、人間が食糧生産できる世界の土地の約4割は乾燥地が占めている。しかも砂漠化や環境劣化などにより、農業ができない土地は増えている。つまり、砂漠のような環境で農業ができるようになれば、より広い範囲で食べ物をつくれるのだ。

砂漠で農業をするためのヒントは大きく分けて3つ。まずは、気候変動に耐えられる強い作物をつくること。地球が温暖化すると乾燥しているところはますます乾燥し、雨が降るところはますます雨が降る。気候が極端化すれば、かつてない作物の病気や病害虫が発生する可能性も。暑さや乾燥だけでなく、病気にも強くたくましい農作物が生き残っていく。

2つ目は土壌を工夫すること。化学肥料を使う収奪農業では土の中に有機物がいなくなり、地力が失われる。人間以外の生物の力も借りて有機物不足の土地を改良する仕組みが必要だ。

3つ目は水をコントロールし、無駄にしないこと。 将来水不足となれば、農業のために真水を得るのは難しくなる。乾燥地では灌漑農業が行われるが、地下から汲み上げる塩分を含む農業用水により「塩害」が発生する。必要以上の灌漑をせず、土壌に塩を蓄積させないことが必須だ。 今砂漠を実験場に行われている農業の取り組みは、もしかすると未来のスタンダードになるかも……? アイディアの数々をご覧あれ。

 

砂漠での農業のアイディア

#1 暑さや乾燥に強い小麦の開発

鳥取大学乾燥地研究センターの辻本壽教授を中心に、暑さや乾燥に強い小麦の開発が行われている。パンや麺類など、私たちが口にしている小麦はおいしさや生産性、育てやすさが重視されたものだ。それは、長い歴史の中で優秀な遺伝子をかけ合わせてきたいわば“サラブレッド”な小麦。だが、本領が発揮されるのは肥料や水、涼しい気候など環境が整っている場合のみ。将来起こりうる気温上昇や乾燥地化、栄養 のない土壌……そんな過酷な環境には耐えられないのだ。

このままでは、小麦が食べられなくなってしまう!? 案ずることなかれ、辻本研究室では過酷な環境でも生き残る野生植物の遺伝子を小麦の遺伝子にかけ合わせ、スーダンの高温・乾燥した農地で試験的に育てている。野生種がもつ性質は多様で、なかには暑さや乾燥に強いものも。気候変動により、作物の“優秀さ”の定義も変わりつつある。