コーヒーの味は淹れ方で変わるのか? 科学的に考えてみた

コーヒー好きなら知っておいてほしい…
旦部 幸博 プロフィール

透過抽出の基本原理

次は透過抽出です。浸漬抽出よりも結構複雑なのですが、できるだけ単純化するため、ドリッパーを1本の円筒に置き換えたモデルを使って、その原理を考えてみましょう(図3)。

図3 コーヒーの透過抽出モデル(段理論) 理論段数が5のときの、成分(●)の溶出パターン
(出典:『コーヒーの科学』)

筒の中にコーヒー粉(あらかじめ吸水済みとする)の層を作り、上から水(湯)を少しずつ加える場合を考えます。水はほぼ一定の速さで粉の 間を通過し、一定時間後に筒の下から出てきますが、この間に粉から水へ成分が抽出されます。

これを何度も連続して繰り返すことで、下に抽出されたコーヒー液が溜まっていくわけです。このときの成分の動きを説明するには数学的に解く方法もありますが、結構難解なので、ここでは近似的に解く別の方法を紹介します。

モデルの見方を少し変えるため、筒を等間隔で輪切りにします。最初の例が「長さ5cmの粉の層を30秒かけて水が通過する」だとしたら、例えば5つに切ると、長さ1cmずつに分かれた5段の粉層を、それぞれ6秒ずつかけて水が通過する計算になるわけです。

そこで、各段で起きる抽出を「6秒間の浸漬抽出」と近似できるものと見なします。また、後で補足しますが、とりあえずは「各段の抽出は6秒でほぼ平衡に達する」と仮定して、成分Aの動きを考えてみましょう。

 

1段目に少量の水を加えて抽出を開始すると、まもなく平衡に達して、成分Aが一定の比率で粉と水に分配されます(ステップ1)。

そして6秒後、その水が2段目に移動すると同時に、1段目に新たな水が加えられ、各段で分配が行われます(ステップ2)。このとき1段目ではステップ1で粉に残った分だけが、2段目では、ステップ1の1段目で水に移行した分と2段目の粉が最初に含んでいた分の合計が、それぞれ一定比で粉と水に分配されることになります。

さらに6秒後には水が次の段に移動……と繰り返して、最後には5段目から筒の下に流れ出るわけです。

このモデルをシミュレートすると(図4)、最初に出てくる抽出液の中では成分が高濃度に濃縮されており、しばらくほぼ一定の濃度で抽出されつづけた後、減っていき、最後には出つくしてしまうことがわかります。

図4 透過モデルの抽出曲線 理論段数40でのシミュレーション結果(出典:『コーヒーの科学』)

抽出液全体を集めると、最初はほぼ一定濃度で、出つくした後は流出量に応じて徐々に薄まっていきます。

また、浸漬抽出の場合と同様にA、B二つの成分を考えると、親水性の成分AはBよりも高濃度に濃縮され、その分、早々に出つくしますが、Bはその後も低濃度のまま出つづけるため、抽出液全体ではBの割合が増えていきます。

最初に濃縮されて抽出され、流出量が増えるにしたがって薄まるとともに、溶け出しにくい成分の割合が増える

……これが透過抽出モデルにおける抽出曲線の「基本形」です。