世界を支配する「少数派」が利権の温床となる「これだけの理由」

関電事件の背景をよく考えてみよう
大原 浩 プロフィール

典型は農業である

アダム・スミスは、ビジネスの会合だけではなく、お茶の会やはたまた舞踏会に至るまで、「商工業者=経営者・ビジネスマン」が集まるところでは、「徒党を組む話」が出ないことはないと皮肉っている。

彼が「徒党を組む話」と言っているのは、現在で言えば「カルテル」であり、少数の企業が談合して、不当に高い値段を維持したり、新規参入を妨害したりすることである。

ここで大事なのは、徒党を組むことで効果が現れるのは「少数派」である場合に限られることである。

もちろん、カルテルを組む企業が業界のシェアの大部分を占める場合もあるが、そのようなケースでも、その業界が国全体から見れば少数派であるのでカルテルが意味をなすのだ。

いいかえれば、多数の「被害者」がいるからこそ、カルテルがなり立つということなのである。

 

例えば、日本で典型的なのが農業である。

最近、コメの消費量が落ちてきたなどといわれるが、その大きな原因は日本国内の米価が高すぎることにある。

米価の内外価格差の実態は、不透明な部分も多いが(政策的にあえてそうしているのかもしれないが……)概ね10~15倍とされる。

少なめに見積もって10倍としても、例えば海外でのコメ価格が5キロ300円とした場合、国内の米価は5キロ3000円である。その差は2700円であり、毎月1袋を消費する家庭では2700円×12カ月=3万2400円の余分な負担をしていることになる。

一般のサラリーマン家庭にとって、手取り収入から年間3万円以上も余分に支払うことはかなりの痛手だ。しかし、主たる収入を得ている仕事や、家族との大事な時間を犠牲にしてまで政治活動を行い、「是正」を求めるほどの金額でも無い。

多数派への被害は広く薄く与えられるために、改革のため立ち上がったり、政治的に団結する動機に乏しいのだ。

それに対して、少数派である農家にとって、コメ価格の利害はとても大きなものである。

1戸当たりの年間米生産量を6500キロと仮定すると、内外格差の影響は年間、

「6500キロ÷5キロ×2700円=351万円」

にもなる。

農家が、農作業そっちのけで、政治活動・選挙活動に注力するのも当然であろう。しかも、米価だけではない、その他の農業補助金も含めれば莫大な収入が、政治の力で国民の税金から農家に支払われる。さらには、2022年には廃止される予定の「生産緑地」も、農地への課税を極端に低くしてきた。

この構造は、いわゆる農林族議員にも都合が良い。選挙で当選するためには、正道を論じて幅広い国民の支持を得るよりも、特定の少数派利権集団に「政治による特典」を飴として与え、確実な票を確保したほうが有利だからだ。

したがって、「安い米価で国民の暮らしを豊かにする」という正論かつ「最大多数の最大幸福」は票にならないので、政治家は見向きもせず、少数派利権集団の「米価の内外価格差を維持せよ」というごり押しが政治の世界ではまかり通るのである。

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