周囲とのジェンダー観の差による孤立化はもちろん夫にも起こりうる。家事や育児に重きを置くことへの職場の不理解や相談相手の不足など、夫が孤立化する要素は多くある。しかし私の経験からは、夫が感じるこれらの孤独感の多くは妻も経験している種類のものであり、妻はそれ以上に社会のあらゆる方面から圧倒的に多種の負担を強いられている。称賛も負担も「不平等」なのである。

では、日本に比べジェンダー観の偏りが小さいとされる欧米ではどうだろうか。

夫の家事を過剰に称賛しない

私たち夫婦は、日本からアメリカ、そして現在住むオーストリアとそれぞれ数年間ずつ暮らしてきているが、やはり欧米では「平等が生む不平等」を感じることが日本に比べて圧倒的に少ない。

例えばアメリカでもオーストリアでも、現地の友人や同僚に毎日料理を作っていることを話しても、「どんな料理作るの?」といった自然な質問が返ってきて気持ちよく会話が進むことが多いし、友人夫婦の家に招かれた際にごく自然に夫が料理を振る舞ってくれることもありふれた光景である。

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職場でも、妻の出張があるからその日は出張は入れないというような会話が日常的に聞かれるなど、夫が家事育児に重きを置く状況への不必要な称賛も批判もほとんど起こらない。先日も男性の同僚が子供を連れて出勤していたが、特に誰も同僚が子供を世話しているという点にはコメントせずただ自然に子供に話しかけていた。

もちろん欧米でも地域や世代によってジェンダー観は異なり、「平等が生む不平等」が起こることはまだある。例えば私たち夫婦がいま住んでいるオーストリアの街は、欧州の中でも比較的古い価値観が強く残る地域で、現地で語学を教えてくれている先生が先日、私が家で食事を作ることに対し「いい夫でうらやましい」と述べていた。しかしそれでも、妻への批判というレベルの不平等を経験することはほとんどない。