オフィスラブ大国・日本、会社で「出会う」率が世界でダントツなワケ

労働問題と表裏一体だった
西口 想 プロフィール

「会社員」化が育んだ「公私混同」の文化

60年代に「見合い結婚」と「恋愛結婚」の比率が逆転し、70年代以降に恋愛結婚のなかでも職縁結婚が主流になったのは、自由恋愛の広がり以上に、この「働き方の変化」の影響が大きかったと私は考えている。相手の将来の収入や人間性がある程度見える職場は、新しい形の「見合い」の場となったのだ。

〔PHOTO〕iStock

ここで重要なのは、「サラリーマン」という言葉に象徴されるように、働き方の変化の主体はあくまで男性だったことだ。

高度経済成長期の男性労働者の昇給幅は、30歳の頃には初任給の2倍、40歳で3倍となるなど、今では想像もできないほど大きかった。また、その頃に、年功賃金・終身雇用と紐づいた企業側の強大な配転権・人事権が認められ、それに適応しむしろ補完するかのように、頻繫な「飲み会」や家族連れの「社員旅行」など、長い労働時間の外でも企業内の人間関係を重視する習慣が広がった。

「会社員」化とは本来、職場(公)と生活の場(私)の分離がその特徴であったはずだ。しかし、高度成長期の日本では、仕事と生活を分けない、というよりも、職場が肥大化して生活の場を覆ってしまうような「公私混同」の文化が定着したのである。その象徴が、職場での恋愛と結婚、公私混同の極みともいえるオフィスラブだった。

 

一方で、女性には結婚退職制や30歳定年制などの性差別的な雇用慣行が残されていた。学校を出て働き始めた女性労働者にとって、この雇用差別は、結婚・出産に際して仕事を辞めなければ夫と一緒に生活(転居)できないかわりに、仕事を辞めても夫の収入で生活できる、という取引になった。

「寿退社」が一般的になったのはそんな時代だ。日本のオフィスラブ文化は、男女間の働き方/働く権利の不均衡をベースにして形成されたのである。

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