オフィスラブ大国・日本、会社で「出会う」率が世界でダントツなワケ

労働問題と表裏一体だった
西口 想 プロフィール

オフィスラブがタブーだった日本

かたや、「オフィスラブ大国」日本はどうだろうか。実は日本でも、第二次大戦前、職場恋愛はタブーとされていたようだ。1955年に出版された恋愛マニュアル本を読むと、「職場恋愛」の章で以下のように書かれている。

職場恋愛とか職場結婚とかいうことが話題となり、事実そういうことがザラにおこなわれるようになったのは、むろん戦後のことである。ひと昔前までは、同じ職場に働く何君が誰嬢に恋をしているというウワサが、上役の耳にでも入れば、それだけでクビの理由にされ、もしも職場で知り合った相手と結婚したければ、あらかじめ片割れのひとりが、円満に職場をしりぞくという条件で、やっとみとめられるという状態だった。
(原奎一郎『恋愛実技』コバルト新書・鱒書房)

戦前、社内恋愛がどういう理屈で禁止されていたのかは明らかでないが、「ダイバーシティ」が理由でないことは確かだ。

それにしても、「恋をしているというウワサ」だけでクビの理由になるというのは相当である。婚前恋愛がそれほどタブー視され、企業の評判にとって不利益になったということだろうか。

 

60年代までは、「会社」よりも「家」だった

1960年代まで、日本では「お見合い」で結婚する人のほうが多かった。60年代以降に「恋愛結婚」が主流になるまで、見合いを軸とした結婚は、当人同士というより「家」と「家」との結婚だった。60年時点でも農林漁業を中心とする自営業世帯が約半数を占めていた日本では、多くの人にとって、「家」こそが一生を捧げる生産拠点だった。そんな重要な「家」を差しおいて、「会社」が結婚話を左右するのがありえなかったから、オフィスラブが禁忌とされたのかもしれない。

しかし、戦後復興と高度経済成長期(1955~70年頃)を経て、日本の働く環境、そして職場恋愛に対する意識は大きく変わっていった。企業などに雇用されて働く人の割合は、1970年に65%、75年に70%となり、90年代前半に80%に達する。親から子への一世代の代替わりで、「会社員としての人生」が一気にメインストリームになったのである。

〔PHOTO〕iStock

これは、その人の今後の経済力を保証する(ように見える)ものが、「家」から「会社」に切り替わったことを意味している。新しく「世帯」を形成する上で、相手の家柄よりも勤務先が重要になったということだ。

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