「なぜ日本では、オフィスでラブ、しますか?」
今年の夏、フランスの新聞社の日本特派員の女性からこんなインタビューを受けた。インタビュー場所は私の職場近くのカフェ。東京の古いオフィス街だ。その日も蒸し暑い夜だった。
――どうして日本では職場恋愛が多いのですか?
――それは「飲み会」が多いことと関係がありますか?
――オフィスラブが多いとセクハラが増えますか?
次々と繰り出されるストレートな質問。
日本を代表して私が答えてよいものかと一抹の不安がよぎったが、他に紹介できる有識者もとくに思いつかなったので、ニッポンのオフィスラブ事情についてこれまで調べたり考えたりしてきたことをお話しした。
今年2月、私は『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)という本を出版した。今回の取材もその本をきっかけに連絡がきたのだ。
まず、日本は職場恋愛が多い国なのだろうか。
全国で結婚式場を展開するアニヴェルセルが2016年に実施したインターネット調査によれば、20~30代の既婚男女がパートナーと出会った場所の第1位は「職場」(27.7%)である。2位は「友人の紹介」(20.5%)で、少し割合が下がって3位「インターネット」(9.2%)、4位「専門学校・大学・大学院」(9.0%)と続く。
「オフィスラブ」と聞くとなにやら昭和な香ばしさが漂うが、20~30代を対象としたネット調査では職場結婚(家族社会学では「職縁結婚」という)が最も多いという。
実は公的調査にも同様の設問がある。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに行っている「出生動向基本調査」だ。直近2015年の第15回調査結果では、初婚同士の夫婦が出会ったきっかけのうち、「職場や仕事で」が28.2%を占めている。「アルバイトで」(3.8%)を足せば32%で、約3組に1組が職縁結婚ということになる。これは「友人・兄弟姉妹を通じて」(30.8%)という出会いよりも多い。
この調査では1982年から同じ設問があるが、「職場や仕事で」は30年以上3割前後で推移している。かくいう私の両親も職縁結婚だ。1970年代後半に職場で出会って交際し、半年後に結婚。1984年に次男の私が生まれた。いわば「オフィスラブ・チルドレン」である。皆さんの周りでも、改めて振り返ると、職場で知り合って結婚する例がありふれているはずだ。