4種類の組み合わせから「4.7兆分の1」を特定する「鑑定」の魅力

自称「なんでもDNA鑑定団」がゆく!
梅津 和夫 プロフィール
鳥海山鳥海山の峡谷 Photo by PhotoAC

また変なことを言うようだが、縄文人であった私の祖先がブナ林から恵みをいただいたときのDNAの記憶がそうさせたのではないかという気がしている。

「縄文人」は研究者となってからの私の大きな関心事でもあり、本書では縄文人の起源について、私なりの「新説」を披露している。

そして、現在は大学の研究機関で、多くの人に面倒がられている太平洋戦争における戦没者のDNA鑑定を率先して行うめぐりあわせとなっているのも、私の父がシベリア抑留者の一人であったことと、どこかでつながっているのではないかと思うのである。

教養としての「DNA鑑定」

こんなふうにDNAによってこれまで隠されていた扉が開き、そこからさまざまな世界が広がってゆくのは、人間だけに限ったことではない。

研究室の中でカラスやカブトエビのDNAをのぞきこんでいても、描き出される結果は野山へと広がり、さらには時空をも超えてゆく。

あらゆる生物のDNAはたった4種類の塩基の組み合わせにすぎないが、思索力しだいでは、その記号の羅列から、生きものの肉眼では見えない生態や、地球規模での進化の歴史を読みとることができるのだ。

世の中にはDNA鑑定の本が少なからず出回っているが、「入門書」といえども大学で学ぶ人向けに小むずかしく書かれているものが多い。今回上梓した『DNA鑑定』は、それらとは一線を画し、私自身が遊び心で取り組んできた研究を紹介しながら、現代科学のひとつの集積であるDNAを読む楽しさを伝える、本当の意味での「DNA鑑定の入門書」をめざした。

本道だけでなく脇道やけもの道にもそれる、筆者に似てかなり気まぐれな本になってしまったが、読んでいただいたみなさんがDNA鑑定を通して、生命のたどった軌跡と神秘を垣間見ていただけたら幸いである。

DNA鑑定