自動車産業をつぶせ!
9月12日から22日まで、フランクフルトでIAA(国際モーターショー)が開かれた。ドイツでは一年ごとに、乗用車のフェアがフランクフルトで、商用車のフェアがハノーヴァーで開かれる。どちらも、パリ、デトロイト、東京、上海などと並ぶ、大きな国際モーターショーだ。
ところが、読者の皆さまははすでにご存こかどうか、ドイツでは現在、地球温暖化問題がオーバーヒートしており、アレヨアレヨという間に、車は忌むべきもので、自動車メーカーは犯罪組織のようになってしまった。
モーターショー2日目の13日には、会場に紛れ込んでいたグリーンピースの活動家が、メルケル首相が視察をしていたところを見計らって、展示してあった車によじ登り、「Klimakiller(=Climate killer)」というプラカードを掲げるという1幕もあったという。

いずれにしても、活動家たちにとって、IAAはあってはならない催し物である。特に、排気量の大きい車は絶対にダメ!
しかも今のドイツでは、車を目の敵にしているのは環境活動家と言われる人たちだけではない。CO2の削減のためにはIAAなどもってのほかと思っている一般市民も多いらしい。そんなわけで、IAA開催中、巨大な抗議デモが2度もあった。
緑の党、 BUND(ドイツ環境・自然保護連盟)、WWF(世界自然保護基金)、キリスト教会、労組などという大御所はもとより、かなり過激な左翼団体、そして、もちろん火付け役となった子供たちの「Fridays for Future」などが一丸となり、市民を巻き込んでのデモだった。
最初が14日の土曜日。この日は、モーターショーが一般市民に解放された初日だったので、目的はそれら車好きビジターの妨害。合言葉は、「内燃エンジンの終わり―― 今、交通転換を!」

彼らのこの日のハイライトは、Sternfahrtと命名された自転車デモだった。あえて日本語に直訳すると「星の走行」。もともと、異なった場所から一つのゴールに向かう競技のことで、軌道が放射線状(星型)になるので、こう呼ぶらしい。この日の星型ルートは16本で、ゴールはもちろんフランクフルトだった。
あちこちから夜明け前に出発した自転車組が、フランクフルトで徒歩組と合流し、見本市会場へのデモ行進が始まったのが昼前。秋晴れの好天だったことも手伝って多くの市民が集まり、その数、主催者発表で2.5万人(うち1.8万人が自転車)、警察発表では1.5万人(同1.25万人)。
デモ参加者が掲げていたプラカードには、「自動車産業をつぶせ」、「Autokratie(=専制政治と車のAutoを掛けている)を打倒せよ」など、自動車産業の没落を期するスローガンが並んだ。
このあと自転車組は、1方向の全車線が封鎖されたアウトーバーン(高速道路)に移動し、サイクリングが始まった。広々としたアウトーバーンが、見渡す限りの自転車で覆い尽くされ、まさに巨大なお祭り。
それにしても、アウトーバーンでの自転車デモが許可されるというのが驚きである。このためにフランクフルト周辺は午前中から渋滞が続き、バスや市電のダイヤまでひどく混乱したという。
フランクフルトはドイツの金融の中心地。しかも、ヨーロッパのハブ空港があるから、渋滞の経済的マイナスもバカにできないはずだ。
