Photo by iStock

ビジネス本の「コミカライズ」が出版業界の常識になった理由

「情報の価値」が変わった時代に…

表紙で微笑む女性キャラ

近年の出版界では「ビジネス書のコミカライズ」が大きな注目を集めています。古典的な名作から、最新のヒット作まで、コミカライズはそれ自体、もはやひとつのジャンルとして定着し、現在では「ビジネスコミック」という分野名まで獲得するようになりました。

しかしそれらの書籍を見て、気がつくことはないでしょうか? そう、どの本もみんな、表紙が「女性」なのです。ある本では明るく元気に、ある本では思慮深そうに、女性キャラクターたちが微笑みかけてくれているのです。

ビジネス書はもともと、がっつり「おっさん向け」ジャンルでした。「おっさんずラブ」ならぬ「おっさんずブック」です。

そうしたおっさん界の中で、キラキラ輝く女性キャラクターたち。この状況は私に「男性比率の高い文系サークルの中にいる少数の女性は、ちやほやされる」という現象、いわゆる「オタサーの姫」を彷彿とさせてなりません。

ですが、なぜ「女性」なのでしょうか? この問いを考えるためには、まず「なぜコミカライズなのか?」を考える必要があります。

 

ビジネス書だからこそ「コスパ勝負」

「なぜコミカライズなのか?」

やはりこれは「現代人は時間がない」という事情につきるでしょう。Webページの読み込みは3秒まで。5秒を過ぎると読まれない。音楽配信でも、曲の出だし5秒で好き嫌いが判断されるというニュースがありましたが、今のマンガでも「冒頭3ページで読者をつかまなければ負け」と言われています。

こうした時代、いくら名著だからといって、たとえばルソーの「エミール」を全部読めといわれても厳しい。「一年かかるぞ」という話です。実際、私も昔、有名な「サヴォワの助任司祭の告白」の章だけでも読もうとしたことがありますが、出だしで諦めたものです(この章だけでも長いのですが)。

かつて「少年マガジン」誌が「一枚の絵は一万字にまさる」という言葉を掲載したことがありました。このフレーズには当時、言論人からの反発もあったそうですが、しかし確かに絵のほうがアクセスが早くわかりやすい。要するに「時間のコスパ」がいい。やはりこれが、コミカライズが求められる大きな理由でしょう。