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中日・根尾選手も愛読!『論語と算盤』における渋沢栄一の美学とは?

日本経済の「顔」が大切にしたもの
石井 徹 プロフィール

経済学部の学生であっても簿記を勉強する際には頭を悩ませています。その複式簿記を見て、一瞬にして「これは必要だ!」と理解してしまうのは天才としか言いようがないのです。プロの税理士や公認会計士は、貸借対照表と損益計算書を数期分見るとその企業が健全かどうかわかるそうですが、それに近いレベルだと思います。

彼の実家が大商人ということもあるのかもしれませんが、時代劇に出てくる大福帳しか見たことがない人間が、フランス語の貸借対照表を見て、「これは必要だ!」と思うのは常人の頭脳ではありません。後年大蔵省の役人になってからは、上司とケンカしてまでも複式簿記を導入しています。

 

名著『論語と算盤』が漫画化しづらいワケ

論語と算盤』の初版刊行は1916年(大正5年)です。いまだ絶版になっていない名著であり超ロングセラーです。有名な経済人の愛読書にもなっています。

昨年甲子園で優勝した大阪桐蔭高校の根尾選手(現中日ドラゴンズ)が、渋沢栄一の『論語と算盤』を愛読していると報道され話題になりました。高校生で『論語と算盤』を読むなんて渋いですねえ。しっかりした青年です。うちにもあんな息子が欲しかった…、きっと御両親の教育の賜物でしょう。

ただし『論語と算盤』をそのまま漫画にしてもおそらく説教臭くて面白くありません。内容はとてもいいのですが、正論ばかり並べられると我々凡人は嫌になってしまいます。

たとえば渋沢は、「青年が富や地位を求めるのは当然だ」という趣旨のことを言っています。

『論語と算盤』の「孔夫子の貨殖富貴観」という章でも、以下の文章を参照して「孔子は富や地位を軽蔑してはいない」と主張します。

「富と貴きとはこれ人の欲する所なり。その道をもってせずしてこれを得れば処らざるなり。貧と賤とはこれ人の悪む所なり。その道をもってせずして、これを得れば去らざるなり」(『論語』)

要するに「不道徳な生き方で富や地位を得たらしがみつくんじゃない。不道徳な生き方をして貧しくなったら仕方がないじゃないか」と言っているわけです。よく読んだら富や地位を軽蔑していないと渋沢は言っています。ただし「人の道に外れてないならば」という条件がつきます。言われてみれば渋沢の言う通りなのです。

おわかりの通り非常に正しいことを言っているのですが、このままではなかなか頭に入ってきません。