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金正恩がほくそ笑んでいる…米国「弱気のサイン」が招く最悪の事態

イラン、北朝鮮に余裕を与えてしまう

裏目に出た選択

米国のトランプ大統領が「サウジアラビア攻撃の犯人」と名指ししていた、イランへの軍事報復を断念した。それ自体は歓迎できたとしても、大統領の信頼性や求心力を傷つけるのは避けられない。北朝鮮もほくそ笑んでいるだろう。

 

トランプ氏は9月24日、国連総会で演説し「サウジアラビアの石油施設に対するイランの攻撃を受けて、我々はイランの中央銀行と政府系ファンドに対して最高度の制裁を課した」と語り、あらためて「サウジ攻撃はイランの仕業」と断定した(https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-74th-session-united-nations-general-assembly/)。

そのうえで、大統領は「すべての国は行動する義務を負っている」と指摘して「イランの脅迫的行為が続く限り、制裁は解除されず、強化される」と各国に協調行動を求めた。懸念されていた軍事報復について、はっきりと「断念した」とは語っていない。

ただ、イランに関する最後の部分で次のように語り、軍事報復を回避する意思を強くにじませた。「米国の親しい友好国の多くは、かつて深刻な敵だった。米国は『永遠の敵』を信じたことは一度もない。我々は敵ではなく、パートナーを求めている。米国は『どの国も戦争を始められるが、もっとも勇気のある国は平和を選ぶ』と知っている」

サウジアラビアが攻撃された直後の強硬姿勢とは、すっかり様変わりした。当初はポンペオ国務長官がイランの仕業と断言し、トランプ氏自身も「我々には、犯人を知っていると信じるに足る根拠がある。検証結果によっては臨戦態勢をとる」とツイッターに書き込んでいた。

この間に政権内でイランへの対応について、どんな議論が交わされたのか不明だが、相当な激論があったのは間違いない。ペンス副大統領も講演で「我々は臨戦態勢にある。我々の利益と地域の同盟国を守る準備はできている。間違えるな」と語っていたのだ。

だが、大統領は結局、ゴーサインを出さなかった。そもそもトランプ氏は最初から、イランとの戦争を望んでいなかった。先週のコラムで指摘したように、大統領は国連総会の機会をとらえて、イランのロウハニ大統領と会談する可能性を探っていた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67310)。

これに反対して、強硬路線を唱えていたのが、解任されたボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)である。トランプ氏はボルトン氏を解任してまで、イランとの交渉路線を選んだ、とも言える。ところが、それが裏目に出てしまった。