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「商いの原点」を忘れた日本企業、相次ぐ不祥事の「根幹」にあるもの

江戸商人の教えに学ぶ

揺らぐ企業の経営理念

令和元年となる今年は例年以上に、企業の不祥事に関しての報道が多くみられる。例えば、かんぽ生命の不適切販売や日本郵便の「みまもり訪問サービス」における自腹営業の問題など、日本郵政グループの不祥事は歴史に残る悪質さを呈している。また、昨年から続く、日産自動車における不正会計や横領などの問題、また吉本興業に所属する芸人による闇営業問題は、組織におけるガバナンスを再考させるインパクトを持つものだった。

7月31日に開かれたかんぽ生命不適切販売問題の謝罪会見/Photo by gettyimages

当然のことながら、企業活動における第一の目的は、利益の獲得である。しかし、そのための行為であれば、無条件に是認されるわけではない。どの国や地域であっても、それは法や道徳などの監視下にある。だからこそ、あらゆる企業は、利益の獲得に先んじた価値観や規範を、内外に向け提示しているのだろう。いわゆる「経営理念」である。社是や社訓といってもよい。

経営理念は、利益追求的な戦略の「上位概念」とされるが、必ずしも、その企業の振る舞いに反映されているわけではない。それは、ある宗教の信者の行動が、その聖典の内容と常に整合性を持つものではないことに似ている。しかし、他の企業の聖典、すなわち経営理念と比較したとき、その企業の特質がより明瞭なものとなることは十分に期待できるはずである。

 

理念の比較は、ただ同時代の複数企業間のみではなく、異なる時代に存在したそれらに関しても可能である。特に、同地域、あるいは同国家内において、異なる時代に存在した企業の理念を比べることによっては、その時代の企業に特有の規範がわかりやすく炙り出されることだろう。

本稿は、以上の観点に基づき、現在の日本企業にとって直接のルーツといえる、江戸時代の商家の理念や、それを支える思想を紹介し、相次いだ不祥事の背景にある問題を考えてみようとするものである。