子を産ませるにもリスクはある
冒頭では、早すぎる妊娠により命を落としてしまった猫の一例を紹介したが、成熟した猫であればほとんどの場合、自力で出産することが可能だ。
しかし近年人気が高まっている超小型犬種、例えば小柄なトイプードル、チワワおよびポメラニアンなどは、骨盤が狭く、子が詰まってしまい緊急帝王切開が必要になることもある。
フレンチブルドッグやパグなどの短頭種も、骨盤の構造の問題から、基本的に帝王切開での出産が推奨されるが、そもそも短頭種は麻酔のリスクも高い。
また、帝王切開に慣れていない動物病院もあるため、妊娠・出産を希望する場合は、事前にかかりつけの動物病院に相談してみると良いだろう。
人間が妊娠すると安産祈願のために戌の日のお参りをしたりするが、近年の犬は品種改良が進み、姿形や大きさは多様化しており、もはや一概に安産とは言えなくなっているのだ。
ちなみに産んだ後も、人間に可愛がられて育てられたペットは、自分の子を育てない、いわゆるネグレクトをしてしまうケースも少なくない。その場合は飼い主が産まれた子に2時間おきにミルクをあげたり、お腹をさすって排泄を促したりといったことをする必要がある。
また、ほとんどの場合、複数頭産まれるので、産まれた子ども全員を自分の家で飼うのか、飼いきれない場合は貰い手は見つかりそうか、など事前に検討しておくことも重要だ。
望まぬ繁殖を防止するのは飼い主の責任
あまり一般的には意識されていないが、動物の飼育方法に関しては、動物愛護管理法という法令によって定められている(資料2)。その中でも、「みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと」は飼い主の責任とされている。
「子供を産ませたい」という明確な意思があるならともかく、なんとなく機会を逃したまま手術をせずに時間が経ち、病気になってから後悔する飼い主を幾度となく見てきた。
年を取り、体力が落ちた状態で病気になり、手術を行うのは、若くて健康なうちに手術を行うよりもリスクが高まる。
もちろん不妊手術をしたらすべての病気を防げるわけではないし、麻酔のリスクも残念ながらゼロではないので迷うところかもしれないが、高齢で病気になってから「実は不妊手術を行っておけば予防できた病気だった」と知ることほど悲しいことはない。
ぜひこうしたメリット・デメリットを理解し、正しい知識を身につけた上で、手術について判断していただきたい。
今までの連載はこちら
資料1)Factors influencing canine mammary cancer development and postsurgical survival.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4319248/
資料2)動物愛護管理法
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/outline.html