2019.09.27

「時速7キロ」ウォーキングのすすめ

まずは10分でもいい
アシックス スポーツ工学研究所

食前に歩くか、食後に歩くか

ダイエットを目的にウォーキングを始めた方は「20分以上やらないと効果がない」という話を聞いたことがあるかもしれません。

私たち人間は、運動するときのエネルギー源として、主に糖分と脂肪を使いますが、脂肪がうまく使われ始めるには少し時間がかかります。運動を始めると、「エネルギーが必要だ!」と感じた脳は、身体にためておいた体脂肪を使うように命令を出します。

ところが、体脂肪がエネルギーとして利用されるには、遊離脂肪酸という形で血液内に放出されなければなりません。その行程が効率よく回りだすのに少し時間がかかるというわけです。

以前は「運動は20分以上やらないと意味がない」と言われたりもしましたが、20分経たないとまったく脂肪が使われていないという意味ではありません。最近では、10分程度の運動でもこまめに行うことで十分脂肪燃焼の効果があることも報告されています。

同様に、痩せるためには、食事でとった栄養が脂肪として蓄積されないよう、すぐ消費してしまうほうがいい。ときに「ウォーキングは食後にやるべきだ」とされるのは、そういう意味なのです。

ただ、この本はダイエットが目的というより、いつまでも元気に歩ける身体を作ることを目的にしています。脂肪を減らすというより、筋肉を増やしたい。そのためには、食前に歩いて、食事で筋肉の材料を補う必要があります。運動をした直後の身体
は栄養を欲する状態になっていますから、効率よく筋肉をつけられます。

それに、長期的に見れば、これにもダイエット効果はあります。短期的に見れば、筋肉量が増えることで体重は増えるのです。しかし、筋肉がつけば基礎代謝が上がる。

何もしていなくても脂肪を燃焼するような身体に変貌するわけです。「痩せやすい身体」に変わる。長い目で見れば、脂肪も体重も減っていきます。

人間が歩けなくなるのは、筋肉が衰えていくからです。50歳以上でウォーキングを始めるとしたら、筋肉をつけることを最優先したほうがいい。本書の目的を考えると食事の前に歩き、歩いたあと食事をとるほうをおすすめします。

食事も、主食、主菜、副菜のそろった献立でバランスよくとるほうがいいと思いますが、まずはたんぱく質をしっかり取って筋力をつけて、しなやかで力強い身体をいつまでも維持することが大切です。

いきなり30~40分ものウォーキングを始めようと思うと、やはりハードルが高すぎます。途中で断念する人が続出するはずです。それより、短い時間でもウォーキングを習慣にしていきたいです。

もちろん目指すべき地点は、運動としてのウォーキングです。運動着に着替えて、「フィットネスウォーキング」(アシックスの商標です)に取り組むようになっても
らいたいです。

でも、入り口は駅まで10分間の通勤タイムをできるだけ早く歩くことであってもいいと思います。

ちょっとした早歩きは最近、「ブリスクウォーク」という名前で呼ばれるようになりました。いつもよりちょっとだけ速めに歩く。そんな意識を持つだけでも、確実に効果が出てくるはずです。

少しだけスピードを上げる、よい姿勢で歩く、そんな意識を持つだけで、運動効果
は劇的に変わってきます。

株式会社アシックス スポーツ工学研究所   1985年アシックスのシューズ、アパレルの研究部門が統合されて設立。「スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを具現化するアシックスの基幹を担う研究部門。人間の身体や動作を科学的に分析することで、アスリートに限らず、一般の人々の生活に役立つ製品やサービスを継続的に開発することを哲学としている。アシックスは1980年代に「走れるビジネスシューズ」を発売、ウォーキングの研究を進め、2002年に3次元足形計測機を店頭に配備、100万人以上の国内外の足形データを持つ。2017年に3Dセンサーを使った歩行姿勢測定システムを、NECソリューションイノベータと共同で開発、3Dセンサーに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴や歩行年齢がわかるシステムを生かして分析を進めている。

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