2019.09.27

「時速7キロ」ウォーキングのすすめ

まずは10分でもいい
アシックス スポーツ工学研究所

なぜ時速7キロなのか?

ウォーキングをすすめられた人のなかには、こう感じる人もいると思います。

「でも、ランニングのほうが運動っぽいし、激しく動くぶんエネルギー消費量も多いんじゃないの?」

実は、そんなことはないのです。ある条件下では、ウォーキングのほうがエネルギー消費量は多くなります。

イタリアの生理学者マルガリア博士らが1963年に、興味深い理論を発表しました。

ランニングのほうはスピードを上げれば上げるほど、エネルギー消費も比例して増えていきます。一方、ウォーキングでは、ゆっくり歩いているときのエネルギー消費量はさほどでもないのに、スピードを上げると加速度的にエネルギー消費が増えることが報告されています。ポイントは、次の3点です。

・時速8キロの場合、歩いても走っても、エネルギー消費量はほぼ同じになる。
・時速8キロより遅い場合、歩くより走ったほうが、エネルギー消費量は多くなる。
・時速8キロより速い場合、走るより歩いたほうが、エネルギー消費量は多くなる。

つまり、ウォーキングであっても「時速8キロ以上で歩く」のであれば、運動効果は同じスピードでランニングするより大きいということです。そして、スピードが上がるほど、ランニングとのエネルギー消費量の開きは、どんどん大きくなっていきます。

しかも、さきほど説明したように、片足支持のランニングより、両足支持のウォーキングのほうが故障のリスクが軽減されます。

一般的に、ウォーキングから徐々に速度を上げていったとき、自然と走り始める速度(PTS:Preferred Transition Speed と言います)は時速7キロ台と言われています。

つまり、エネルギー消費量がランニングに近づきつつ、自然と走り出さないギリギリの速さは時速7キロ程度となります。ですから、目標として「時速7キロのファストウォーキング」を念頭に置きましょう。

時速7キロというのは、1分間に約120メートル進むぐらいの速さです。時速7キロは、ストライド(一歩)は50歳で80センチ弱(身長比の約50%)になるので、単純計算なら1分間に約150歩進むイメージになります。いずれにしても結構、高い目標だと思います。

もちろん、これは「できるだけ効率を高めるならば」という話です。時速8キロ以下で歩いたとしても、エネルギーは確実に消費されます。単にランニングより効果が小さいというだけです。女性であれば男性より一般的にストライドも小さくなるので時速6キロを目標にしていただいても構いません。

ウォーキングをすれば、ランニングより故障のリスクを少なく筋力をつけられます。筋力が衰えている人や、初心者は、遅く歩くのでかまいません。それでも歩かないよりは十分な効果が期待できます。

もっと速く歩いたら?

実際に時速7キロで歩いてみると、かなり疲れます。夏場だとすぐ汗だくになりますし、20分も歩けば息が上がります。決して「ウォーキングは楽なスポーツだなあ」とは感じないと思います。

一般的に、人間の歩行速度は時速4~5キロと言われているので、時速7キロは相当なスピードです。「わざわざ運動着に着替えて行うスポーツ」としてのウォーキングだと考えてください。

この速度でウォーキングを行うと、「もう走ってしまいたい」という衝動にかられるはずです。先ほどPTSという言葉で説明したように、速度のことをまったく考えず、どんどん早歩きの速度をあげていくと、人間はどこかで必ず走り出します。

走るほうが楽だからです。そのときの速度を見ると、だいたい時速7キロ台になっているはずです。

時速8キロを超えると走ったほうが楽だということを、人間の身体はおおよその範囲で知っているのです。だから、思わず「もう走ってしまいたい」と考えてしまう。これが、歩いたほうがエネルギー消費量は多いという意味です。

競歩の世界記録保持者は、時速15・6キロものスピードで歩きます。私たちが目標とする時速7キロの、倍以上です。これまで述べてきた話からすると、競歩というスポーツは、ものすごく非効率なエネルギーの使い方をしているわけです。選手たちは、さぞかし走り出したい誘惑と戦っていることと思います。

もちろん、ダイエットを目的として、少しでもエネルギー消費量を増やしたいという人は、時速7キロより速く歩いてかまわないのです。ただし、速く歩けば歩くほど、足には負担がかかる。

トレーニングをしていない初心者の方が、競歩のスピードでいきなりは歩けないと思います。逆に、時速7キロより遅い速度で「スロージョギング」をする方法があります。そのほうが、同じ速度で歩くよりもエネルギー消費は多い。ただし、ジョギングでもジャンプと着地の繰り返しになるのは変わらないので、筋疲労による故障の可能性は小さくないでしょう。

エネルギー消費量が多くて、なおかつ故障リスクも少ない。時速7キロを目標に歩くことは、非常に有効なのです。

私たちが書いた『究極の歩き方』(講談社現代新書)で目指しているのは、ダイエットというよりは、いつまでも元気に暮らせる身体を作ることです。

いつまでも歩ける体力をつける。走るのと同じぐらいの運動効果があって、なおかつ故障が少ないという理由で、時速7キロのウォーキングを目標にすることは妥当な結論だと考えています。

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