大停電の千葉で私を襲った、老親世代との「想像を絶するトラブル」

館山市に暮らす作家の「私的体験報告」
こかじ さら プロフィール

コンビニは閉まり、信号も消えた

午前11時、屋根瓦が落ちたという兄夫婦宅に自転車で向かうと、その時点で我が家の近辺では唯一営業しているガソリンスタンドに並ぶ車で県道には大渋滞が発生しており、自分の住む地域だけが奇跡的に電気が通っていることが判明する。

停電中の兄夫婦宅で、雨漏りがしている部屋から別の部屋に家具を移動し、押し入れの中にある布団類を一時的に我が家に避難させるための袋詰めを開始。作業中に、近所の人から、館山市役所や総合病院を含めた市内のほとんどの地域が停電中だという情報を得る。スーパーマーケットもコンビニもすべて休業していて、信号機も消えたままだという。屋根の修理を依頼すべく、兄が大工の棟梁に何度か電話を掛けるが当然のごとく繋がらない。

 

午後12時半、兄夫婦宅での作業を終え、自宅へ戻る。

それでもまだ、この時点では、今日中には電気も復旧するだろうと、暢気に構えていた。

だかしかし、現実は甘くなかった。倒壊したガソリンスタンド、ショーウインドウが粉々になったドラッグストア、潰れた神社のお社、道を塞いでいる何本もの倒れた電柱など、生々しい被害の状況がSNS上にアップされはじめると、居ても立ってもいられず再び自転車で家を飛び出した。

親戚や友人宅の被害状況を確かめるために館山市内を走り回ると、やはり我が家の周辺以外はどこも停電。多くの家の屋根瓦が落ち、ガラスが割れ、ガレージに置かれていた車は見るも無惨な姿で潰れていた。

館山市内海岸通りにある不動産店。店の前部分が吹き飛ばされている

午後3時過ぎ、一旦家へ戻ると、幸運にも早々に電気が復旧した我が家の冷房が効いた茶の間で、テレビをのんびり観ていた父(89歳)が、開口一番、「NHKの映りが悪いから電気屋へ電話しろ。これじゃ相撲が観られないだろ」と宣った。

「だから、今それ重要じゃないでしょ。館山市中が停電なんだよ。病院だって死ぬか生きるかの状態でがんばってるんだよ」

状況を説明するが、高齢の父は、「相撲が観られない」と繰り返す。

「勘弁してくださいよ」とは言えず、ムンクの「叫び」のような顔で、私は思わず天を仰いだ。

午後7時、停電が続いている地域に住む兄夫婦と叔母一家が避難してきた。高温多湿な自宅で1日を過ごした高齢の叔母は熱中症気味で足下もおぼつかない。義姉は、実家(館山市の南部に位置する布良〈めら〉地区)で一人暮らしをしている父親(87歳)と連絡がつかないことを気に病んでいた。

ただ一方で、

「いくらなんでも、明日には復旧するだろう」

誰もがそう思ってもいた。