追悼 予備校講師「金ピカ先生」が我々だけに語った「最期の言葉」

「生きていても、意味がないから」
週刊現代 プロフィール

壁に手をつき、一段一段ゆっくりと上がっていく。ようやく寝室にたどり着くと、ベッドに腰掛けた。枕元にあるのは近所のセブン-イレブンで売られているワンカップの焼酎と、吸殻で埋め尽くされた灰皿。近くには日本刀のカタログも置かれていた。ベッドはタバコの火種を落としてできた焦げ穴だらけだった。

いま口にするのは焼酎とタバコくらい。アルコール度数が20度の焼酎が好みで朝も夜もこれを飲んでいます。タバコはケントの1ミリ。食事? ほとんど食べません

話している途中で思い出したように枕元の焼酎を手に取り、あおり始める。しかし、なかなか喉を通らない。なんとか飲み込んだが、ゴホゴホと咳き込むとベッドの上でもだえてしまう。心配になり、「飲まないほうがいいのでは」と声をかけるものの、「大丈夫、大丈夫だから」と聞く耳を持ってくれない。

我々は、佐藤さんにカリスマ講師だった日々の思い出話を聞こうと思っていた。佐藤さんはゆっくりと考えながら、ぽつりぽつりと語ってくれたが、漏れてくるのは人生に対する諦めの言葉ばかりだった。

楽しかった思い出? う~ん、いい時代でしたよ。でも振り返っても、仕方ないですからね。(いまの自分は)生きる屍。やりたいこともなければ、なにもしたくないんだ。林さん? 面識はまったくない。テレビは見れないし、とにかくもう世の中への関心がないんだ

 

「早く死ねたらいいのに……」

なぜ、これほどまでに荒んだ生活を送るようになったのか。きっかけは、長年連れ添った妻からの三行半だった。

中年に差しかかったころ、脳梗塞や心筋梗塞と立て続けに病気を患った佐藤さんを、妻は献身的に支えていた。だが、収入が激減しても変わらぬ佐藤さんの放蕩ぶりについに愛想を尽かし、ある日突然出ていったという。2年半ほど前のことだ。

しょっちゅう喧嘩をしていたが、いなくなってみて、初めてそのありがたみがわかる。2018年の夏に『スポーツ報知』の取材を受けたときにはまだ、独りで過ごす日々を「バラ色の余生」と語る余裕が残っていた。