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米国「逆イールド」発生、それでも「景気失速」にはならなそうなワケ

「実質金利」を用いて考えると…

米国経済のリセッション懸念

昨年後半以降、米国株をはじめ、世界主要国の株価は一進一退で推移している。

もちろん、その最大の要因は、混沌とする米中貿易戦争動向であることは言うまでもない。だが、これに加え、株価を不安定に推移させている要因の1つとして考えられるのが、米国国債市場で「逆イールド」現象が発生していることではなかろうか。

この「逆イールド」という現象は、短期ゾーン国債の金利水準が、長期ゾーンの国債の金利水準を上回る状態を指す。

通常、短期国債は償還期限が短く、長期国債と比較すると価格の変動が小さい。逆に長期国債は将来の価格変動が大きいため、この分のリスクプレミアムが金利に加算されることになる。そのため、通常、長期国債は短期国債よりも利回り水準が高い。この国債市場の通常の状態は「順イールド」といわれる。

つまり、「逆イールド」は「稀な」現象なのである。1980年代半ば以降で、「逆イールド」が発生したのは、今回で4回目である。

 

それでは、「逆イールド」がなぜ、株式市場にとってネガティブな材料になるのだろうか。それは、「逆イールド」が発生すると、その後、半年から1年超程度のタイムラグをもって景気が失速したためである。

今回を除く過去3回の「逆イールド」局面(1989年半ば、2000年半ば、2006年半ば)では、時間差はまちまちながら、いずれも、その後、米国経済は深刻な不況に陥った(S&L危機、ITバブル崩壊、リーマンショック)。すなわち、経験則上では、「逆イールド」は、景気後退の先行指標として機能してきた。

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実際に、ニューヨーク連銀は、長短金利差(10年物国債利回りと3ヵ月物国債利回りの差)を用いて、「逆イールド」が1年後の米国経済にもたらしうるリセッションの実現確率を推定している。これによると、8月末時点で、「1年後(したがって、2020年8月時点)に米国経済がリセッションに陥る確率」は37.93%となっている。

確率的には50%を下回っているが、過去、この確率が30%を越えると1年後に米国経済はリセッションを迎えていることが多いので、イールドカーブの推移をみる限り、現在、1年後のリセッションが懸念される状況であるということになる。