家畜豚へのワクチン接種は、輸出などビジネス面での影響だけでなく、衛生管理意識の低下を招くと懸念されている。中国をはじめ、アジアでは有効なワクチンがない別の病気「アフリカ豚コレラ(ASF)」も猛威を振るっている。
冒頭の自民議員は「もし『ワクチンがあるから大丈夫』などという安易な考えがはびこった状態でASFが上陸すれば、本当に日本の養豚業界は10年は再起できなくなってしまう」と危惧する。
ASFは昨年夏に中国で確認されて以来、ベトナムなどでも発生していたが、今年に入ってミャンマーなど東南アジア全域に拡大したほか、北朝鮮や韓国にも感染が及ぶようになった。
中国でも、感染した家畜豚は殺処分するのが原則のため、景気が減速する中、物価上昇の大きな原因となっている。中国の2019年8月の消費者物価指数は前年同月比で2・8%上昇したが、これは豚肉の小売価格が約1・5倍に上昇したのが大きな要因だ。
専門誌記者は「豚肉は中国料理に欠かせない食材のため、価格が高騰すれば共産党批判につながりやすい。当局もそれを警戒して、補助金を配ったり輸入を増やしたりするなどしていますが、中国の農家の衛生意識が高いとは言えないこともあり、焼け石に水の状態です」と話す。