豚コレラ感染拡大…ワクチン接種を遅らせた「有力養豚県の猛反発」

なぜ対応が後手に回ったのか
松岡 久蔵 プロフィール

日本養豚協会幹部によると、九州の有力養豚県から猛反発があったことも、ワクチン接種が遅れる原因になったという。

「九州南部は2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の恐怖が身にしみているので、家畜の感染症対策が徹底しています。当時、養豚場周辺は細い裏道まで徹底的に消毒するほどでしたから、今回もワクチンに頼らずとも、養豚農家の努力と自治体の野生イノシシ対策で乗り切れると思ったのでしょう。

しかし、全国の養豚農家がそうした意識とノウハウを持っているわけではありません。あれよあれよという間に感染が拡大し、もう一つの有力養豚地区である関東にまで広がってしまった。数の上から言っても、関東地方は群馬、千葉、茨城、栃木を合わせると、鹿児島・宮崎の合計と同規模の全国2割程度の頭数を生産しているため、このまま九州に配慮してワクチン接種をせずにいれば、より深刻な事態になるとの判断でした。

初期に感染が確認された自治体は早期のワクチン接種を主張していただけに、『有力県の言うことばかり聞いた結果、感染が拡大した』と、業界では対応が後手に回ったことを批判する声も上がっています」

 

養豚業界、壊滅の危機

日本では、豚コレラに感染した豚は殺処分すると定められている。すでに約13万5000頭が主に埋却されており、感染豚が市場に出回ることはないが、風評被害の懸念はぬぐえない。

先の養豚協会幹部は「飽食の時代で豚肉以外にも多くの選択肢がある中で、消費者から嫌われれば死活問題です。ただでさえ農家の高齢化が進む中、今回の感染拡大を機に廃業が相次げば、養豚業は本当に壊滅してしまうでしょう。

前回の感染確認と終息のあと、我々が10年かけて獲得した『清浄国』認定が、こんなに短期間で崩壊してしまうとは思わなかった。それほど疫病を食い止めることは難しいということを教訓に、もう一度積み重ねていくしかない」と悔しさをにじませる。

農水省はワクチンの増産を製薬メーカーに指示し、都道府県知事の決定に従って、すでに感染が確認された県を中心にワクチン接種の範囲を拡大していく方針だ。