カエサル、ヘルウェティイ族に快勝する

【5分de名著】カエサル『ガリア戦記』訳:國原吉之助②
講談社学術文庫 プロフィール

カエサルの本領発揮

21 同じ日、偵察隊が、敵はローマ陣営より十二キロ離れた山の麓に陣地をとった、と報じてくる。その山の形状や周囲の勾配などを踏査するための兵を派遣する。傾斜はなだらかであると報告される。およそ、第三夜警時にはいったころ、総督代理ラビエヌスに二個軍団を率い、あたりの地勢に通じた案内人を連れ、山の頂上に登るように命じる。

 カエサルは自分の計画をラビエヌスに説明する。彼自身は第四夜警時にはいったころ、敵の通っていたと同じ道を敵陣へ向かう。全騎兵を自分の前に行かせる。これに先立って、コンシディウスを偵察隊といっしょに派遣しておく。コンシディウスはスッラの配下で、ついでクラッススの軍隊で奉公し、戦争体験に長じた一流の兵士と考えられていたのだ。

22 夜明けと同時に、ラビエヌスが山巓(さんてん)を占領したとき、カエサルは敵の陣地より二・四キロ以上離れていない地点まで来ていた。あとで捕虜から聞いてわかったように、そのとき敵はカエサルの接近も、ラビエヌスの接近も、まだ知らずにいた。

 ところが、コンシディウスは、まっしぐらに馬をとばし、カエサルのところへ帰るとこう告げたものである。カエサルの命令でラビエヌスが占拠することになっていた山は、敵の手に帰している。この事実を自分は、ガリア人の武器や装具の飾りで確認したと。

 そこでカエサルは、軍勢を近くの丘へ連れて登り戦列を敷く。ラビエヌスは、カエサルの部隊が敵の陣営の近くに現われるまで、戦いを交えぬようにあらかじめ指示されていた。それでラビエヌスは、四方から同時に敵を攻撃できる時まで、山を占拠したまま、戦いを差し控え、カエサルの部隊の接近を待っていた。

 昼も大方過ぎたころ、やっとカエサルは偵察隊を通じて、真相をつかむ。つまり件の山は味方に占拠されている、ヘルウェティイ族はそのため、陣営を取り払って移動した。コンシディウスは恐怖心から度を失い、見てもいないものを見たかのように、カエサルに告げたのであると。その日は、これまで通りの間隔を保って、敵の後を追って行き、彼らの陣営より四・五キロほど離れたところに味方の陣地を構築する

23 翌日、軍隊に穀物を配給すべき時なのに、わずか二日分の貯えしか残っていなかったし、それにビブラクテというハエドゥイ族のうち群を抜いて裕富な町へ、二十七キロとちょっとの地点まで接近していたので、今後の食糧供給の手段を確保しておくべきだと考えた。ヘルウェティイ族の追跡から道をそらし、ビブラクテの方へ急ぐ。このことが、ガリアの騎兵隊長アエミリウスの逃亡奴隷を通じて、敵に告げられる。

 ヘルウェティイ族は、ローマ軍が恐怖から勇気を失い、自分らから離れて行ったと考えたのか、それとも前日、ローマ軍が有利な地位を占めながら、戦いをしかけていなかったので、なおさらそう感じたものか、それともローマ側の食糧輸送の道を遮断できるという自信があってのことか、計画を変更し、進行方向を変え、わが軍の後をつけて行列のしんがりをなやましはじめた。

24 これに気づくとカエサルは軍団兵の総勢を近くの丘へ連れて登り、騎兵隊は敵の攻撃に対抗させて送り出す。その間に古強者の四個軍団で三重の戦列を丘の中腹に敷く。丘の頂上にはイタリアで新しく募集していた二個軍団と、すべての援軍歩兵をおいた。

 こうして自分の位置から上の方の27丘を全部、兵でみたした恰好となる。とかくするうち、全軍兵士の携行物を一ヵ所に集め、頂上の方で持場を守っていた兵らの手で、その周囲に防御施設を作らせる。

 ヘルウェティイ族は、全部の荷車を動員して、われわれの後を追い、一ヵ所に輜重を集めた。

 彼らは隙間のない戦列で騎兵を押し返し、つづいて密集陣を作って、わが軍の最前列のすぐ下まで攻め登ってくる。


(27)「こうして自分の位置から上の方の」ita uti supra seの位置は(ω)C.では数行上にあるが、今はKMSの校訂に従う。LOはom.